前回(ビタミンEの働き)からの続きです。ビタミンEは自然界に多く存在するビタミンですが、少しずつ形の違う種類があります。そこで、ビタミンEの種類と働きの違い、天然と合成の違い、効果的な摂り方、そしてビタミンEが不足しやすい人について解説します。
ビタミンEの分類
ビタミンEはその側鎖の違い(構造の違い)から、「トコフェロール」と「トコトリエノール」に分類できます。
さらに、トコフェロールとトコトリエノールは結合するメチル基の位置と数によってそれぞれα(アルファ)・β(ベータ)・γ(ガンマ)・δ(デルタ)の4つに分類され、合計8種類のビタミンEがあります。「ビタミンE」とは、この8種類の同族体の総称なのですね。
自然界に多く存在する、つまり食物から一番多く摂取されるのはαトコフェロールです。
トコフェロールとトコトリエノールの違い
トコトリエノールは、構造上ターゲットとなる細胞内に素早く取り込まれやすくい=即効性があるのに対し、トコフェロールはゆっくり細胞に働きかける=持続性があるという特徴があります。
トコトリエノールはトコフェロールの約40~50倍の膜酸化防止力があり、細胞膜周囲全部の抗酸化に働く一方、トコフェロールは膜の近くのポケットのような所に入り、周囲の抗酸化をします。
トコトリエノールはパーム油や米ぬか、小麦胚芽などに含まれますが、通常の食品にはほんのわずかしか含まれておらず、以前は栄養学的にあまり重視されていなかったようですが、最近はその高い抗酸化作用が注目され、「スーパービタミン」と呼ばれサプリメントとしても活用されています。
天然ビタミンEと合成ビタミンEの違い
ビタミンEには抗酸化作用や血行促進作用があることで知られていますが、α・β・γ・δの4種類のビタミンEの中で最も生理活性が強く血行促進作用があるのはα型です。抗不妊因子として見つかったのも、αトコフェロールのみ。
一方、抗酸化活性強度の順位は、α<β<γ<δとなります。つまり、抗酸化作用が一番強いのがδ型です。
合成のビタミンEはほとんどがα型なので、抗酸化作用はあまり期待できません。
一方、天然のビタミンEは、半分がαで残りの半分はβ・γ・δの形をしていることから、血行促進作用と共に抗酸化作用が得られます。また単体で摂るよりも一緒に摂ることで、相補的に効果を発揮することが期待できます。8種類のビタミンEが自然な配合で含まれたものは「ミックスビタミンE」と呼ばれます。抗酸化作用を狙うなら自然に近い形のミックスが望ましいといえます。
ちなみに、ビタミンEサプリの裏を見て、「d‐αートコフェロール」または「dl‐α‐トコフェロール」といった表記がある場合、「d」であれば天然、「dl」とあれば合成、と見分けることができます。
天然ビタミンEに比べると合成のものの方が安価ですが、しっかりとビタミンEの効果を得たいのであれば、天然の形のビタミンEを選ぶべきであると言えます。(中には、合成のものと天然ビタミンEの一部を混ぜていて、α型が半分よりも多くほとんど合成のものと同じようなバランスになっているものもあるようなので、注意が必要です。)
ビタミンEの効果的な摂り方
ビタミンEを多く含む食品と言えば、アボカド、アーモンドなどのナッツ類、緑黄色野菜などが挙げられます。
また、ビタミンCには活性酸素によって酸化されたビタミンEをもとに戻してくれる作用があるので、ビタミンEはビタミンCと一緒に摂ることで抗酸化作用が高まります。
ビタミンEが不足しやすい人
抗酸化やアンチエイジングのためにも欠かせないビタミンEですが、特に、スポーツ選手や日光をたくさん浴びる人、喫煙者、ストレスの多い人、酸化した油の多い加工食品や揚げ物を多くとる人、たくさんお酒を飲む人etc.つまり、酸化ストレスの多い方は、ビタミンEが不足しやすいと考えらえます。
また、フィッシュオイルは酸化しやすいサプリなので、フィッシュオイルを摂る場合はビタミンEと共に摂ると良いでしょう。
血液検査データからもビタミンEの不足を推測することもできます。血液検査をしてみて「CPK」の値が高い方や、溶血があって「間接ビリルビン」等の値が高い方などはビタミンE不足の可能性が高いので、ビタミンEの補給を検討してみてください。