栄養ドリンク剤にも含まれていて「疲労回復」でおなじみのタウリン。他にも健康を保つために欠かせない様々な働きがあります。そこで、注目の栄養素であるタウリンについて解説します。
タウリンとは
タウリンは、たんぱく質が合成される過程でできるアミノ酸に似た物質で、含硫アミノ酸の一種(アミノ酸誘導体)。
動物や鳥・魚から昆虫に至るまで広く含まれる成分ですが、植物には含まれません。ただし、海藻類には含まれます。
人間の身体では体重の約0.1%存在し、生命の活動を維持するのに不可欠なな働きをしています。脳・心臓・肝臓・腎臓・骨格筋・骨髄・網膜など、さまざまな臓器や組織に含まれていますが、その70%程度は筋肉にあると言われています。尚、タウリンは他のアミノ酸と結合せず、体内で遊離した状態で存在しています。
タウリンの働き
タウリンは、身体の細胞機能を正常に保つために欠かせない物質で、神経伝達物質としても重要な役割を果たします。例えば、筋肉中のタウリンが不足すると痙攣が起こりやすくなり、こむら返りの原因の一つとなります。
神経系の機能を高めるだけでなく、疲労回復、ホメオスタシスの調整、肝機能を良くする、胆汁の排泄促進、弱った心臓の機能を高める、浸透圧の調整(電解質バランスの調整)、血圧の安定、細胞膜の安定化、免疫機能の維持、抗酸化作用、インスリン分泌を促進し糖尿病を予防する、網膜の健康を助ける(視力の衰えを防ぐ)、乳児の脳の発達(母乳にも多く含まれる)など、実に様々な働きがあるため、タウリンの十分な補給はさまざまな疾患の予防となります。
医薬品としても用いられており、高ビリルビン血症における肝機能の改善、うっ血性心不全などの薬となったり、眼の新代謝を良くして眼の疲れや眼病への効果があることから、眼科で処方される点眼薬にも含まれています。
中国最古の薬学書「神農本草経」書の中に記載されている生薬の一つである「牛黄」(ゴオウ。大変希少な牛の胆石)の中の主成分となっていることでも知られています。
タウリンと炎症・消化機能
タウリンは食べ物の消化と吸収の面でも非常に重要な役割を果たします。なぜなら、タウリンには胃酸や胆汁酸の分泌促進をする役割もあるからです。
胃酸や胆汁酸は食物の消化だけでなく、腸内悪玉菌の殺菌物質としても働きますので、腸内環境を整えるためにも非常に重要な役割をもっています。
体内のタウリンは食べ物から得られるものと体内で合成されるものの二種類。ですが、体内に炎症があると、タウリンが体内で合成されるときに働く機序が止まってしまい、タウリンを合成することができなくなり、タウリン不足になります。
すると、胆汁酸が充分に分泌されず、脂溶性ビタミンを始めとする脂溶性物質の吸収も低下してしまいます。慢性炎症の影響はこんなところにもあるのですね。炎症対策、大事です!(詳しくはこちら)
また、注目したいのが、胆汁酸を増やす食材として注目されている食材=こんにゃく・もずく・まいたけなどです。これらの食材は食物繊維が豊富で、古い胆汁酸を吸着して排泄して新しい胆汁酸を分泌させる働きがあると言われています。
タウリンを豊富に含む食材とは?
タウリンは特にイカやタコなどの軟体動物・甲殻類(えびやカニ)・貝類・アジやサバ(近海魚)・ぶりやカツオ(血合いの多い部分)などの魚介類に多く含まれるます。タウリンは水溶性なので、生で食べられるものは生で食べたり、吸い物や煮魚などの場合は煮汁を一緒に食べると摂取しやすくなります。
ちなみに、タウリンは人や犬では体内で合成することもできますが、猫は体内でほとんど合成することができないことが知られています。そのため、えさからのタウリン補給が不足すると目や心臓に異常をきたします。従って猫は食事から摂取する必要があり、キャットフードにもタウリンが添加されています。
飼っている猫ちゃんがキャットフードよりもドッグフードが好き!なんていう場合であっても、ドッグフードばかり与えているとタウリン欠乏になってしまうためNG!!ということです。
昔から猫がネズミや魚を捕って好んで食べるというのは、本能的にタウリンを多く含む食材を認知して必要な栄養素を補給しているのかもしれないですよね。