医師や栄養士、健康意識の高い人たちの間で広まりつつある「分子栄養学」について解説します。
「分子栄養学」ってなに??
「分子栄養学」の考え方は、1960年代に、米国の化学者ライナス・ポーリング博士と、精神科医エイブラハム・ホッファー氏によって作られました。
正式には「分子整合栄養医学」(Ortho-Molecular Nutrition and Medicine)としてポーリング博士が名付けたものが、省略して「分子栄養学」と呼ばれています。
ちなみにポーリング博士は、ノーベル化学賞・ノーベル平和賞と、二度のノーベル賞を受賞した天才化学者として知られています。
従来の栄養学との違い
従来の栄養学は、「欠乏の栄養学」であったと言われています。
ビタミンの摂取量では、ビタミン欠乏症にならない程度の量を摂ることが指導されます。
厚生労働省が定めている「日本人の食事摂取基準」が示している栄養素の量は、
不足のリスクがない、かといって過剰による健康障害を起こさない量です。
例えば、ビタミンは欠乏症を補うためのものなので、微量で十分、という考え方です。
例えば、ビタミンCなら、壊血病にならない程度、
ビタミンB1なら脚気にならない程度を摂れば良い、
ということになります。
しかし、実際には、人それぞれ個人差があり、消化吸収力、ストレス状態、生活環境、年齢、病気など、様々な条件によって、必要とする栄養素量は大きく異なるはずです。
ポーリング博士は、栄養素の不足が病気を引き起こすので、
それを十分補充することで、病態の改善が見込めるのではないかと提案しました。
日本人の栄養充足度は、
三大栄養素(カロリー)は足りているけれど
ビタミンミネラルが不足している人が多いというパターンが結構多いです。
ちなみに、
食費が多ければ多いほどカロリーが減り、ビタミンミネラルが増えるのに対して、
食費が少なくなるほどカロリーは増え、ビタミンミネラルは減ってしまう傾向があります。
食費と栄養価は比例しやすいということですね。
分子栄養学と栄養療法
「分子栄養学」とは、
栄養学だけでなく生化学・医学・生物学に基づき、
身体を構成する細胞の状態に目を向けて行っていく栄養療法の考え方です。
分子栄養学に基づいた栄養療法では、
身体の中にある分子(栄養素)をその人にとって最適な濃度にまで到達させて、
体内の組織(臓器)や細胞の分子構造を変化させたりすることで、
身体の機能を向上させ病態を改善させる、
という治療法が行われます。
例えば、
栄養素の医学的効果を得るために、
時には通常の数十倍~数百倍の量の
ビタミンが用いられることもあります。
身体の不調の原因は食生活や胃腸の状態だけでなく、
炎症、重金属の問題なども、とても重要な問題となります。
遺伝的に精神的な不調が起こりやすい体質の人もいるといわれています。
身体に起きた問題を一つ一つ良くしていくためには、
カウンセリングをしたり、身体の状態を知るために血液検査(または毛髪検査や尿検査や便検査)などを行って、食事を見直したり、サプリメントを使用したり、
様々な方法でアプローチを行っていきます。
「分子栄養学」を勉強すると、
例えば精神的トラブルがある場合に、
副作用の多い薬に頼るだけでなく、
もっとできることがあるということがわかります。
深刻なうつや精神的な問題を持つ方や
遺伝的要素が強い人にとっては
薬を全てやめるというのはなかなか難しいかもしれませんが
薬を減らすことは十分に可能であると言われています。
分子栄養学の3つの原則
分子栄養学の重要な3つの原則をまとめると以下の通りです。
①根本原因を見つける
やみくもに栄養を摂るのではなく、病気や不調を引き起こしている根本原因を見つけます。
②生化学要素を考慮する(検査をする)
血液検査や毛髪ミネラル検査、尿検査などによって、個々の生化学的なカラダの状態を把握します。
③適切な量の栄養を摂る
目的に合わせて最適量の栄養素を摂ることが大切です。
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