血液検査のデータからわかることとその活用法について解説します。
血液検査データからわかること
皆さんは、健康診断や人間ドックを定期的に受けているでしょうか?通常の健康診断や人間ドックで行われる血液検査では、主に肝臓の働きや腎臓の働きなどに異常がないかどうかをチェックしていますよね。
健康診断では「異常なし!」と言われても、なんとなく身体の調子が優れないという方もいらっしゃるかと思います。
そんな場合、血液データを分子栄養学的に読んでみると、栄養素の過不足や、酵素の活性、ストレスの度合い、抗酸化力や炎症の状態など、様々なことを推測することができるので、たとえ血液データが基準値内に入っていたとしても、色々と問題が存在することがあります。
その他にも、身体の中の状態をより詳しく知るためには、尿中に排泄される代謝産物を調べる「有機酸検査」や、「毛髪ミネラル検査」、「便検査」、「アレルギー検査」等々、様々な検査が用いられる場合もありますが、まずは手軽な血液検査データだけでも、得られる情報は非常にたくさんあります。
もちろん、血液データの数字だけでは推し量れないことはたくさんあるのですが、わりと手軽に受けられる血液検査の数字を読むことで、自分の身体の中の状態を推測できて、健康維持対策のための道しるべとして活用できるなんて、これを利用しない手はありません。
血液検査の「基準値」とは?
そもそも、血液検査の「基準値」というものは、どうやって定められているのでしょうか。
血液データの基準値として用いられるのは、「臨床判断値」というものと、「基準範囲」というもので、臓器別の病気のスクリーニングのために使用されます。
「臨床判断値」は、例えば、糖尿病や動脈硬化などに関する専門集団(学会)が定めた基準値で、その疾患の診断基準や治療を開始する判断のために用いられます。
そして、通常の検査で用いられる「基準値」の多くは、「基準範囲」と呼ばれるものです。これは、統計学的に算出した数値範囲を用いています。
健康な成人の集団のデータをもとに、平均値を中央として、95%の人が含まれる範囲が「基準範囲」となります。(つまり、全体の5%の人が基準値外となる)
一方、栄養療法におけるデータの判断値は、「基準範囲」のように、統計学的に定められた値ではなく、臨床的な経験をもとに、栄養状態を評価するために設定されたものです。
栄養療法専門のクリニックの場合では、病態を積極的に改善させるために必要な代謝を得るための判断値として、血液検査の結果を見ている、ということになります。
血液データの活用法
血液検査のデータから栄養状態を知ることができたら、それをどのように活用すれば良いのでしょうか。
例えば、「たんぱく質不足」だということがわかった場合には、たんぱく質食品をたくさん食べ、ビタミンが足りないとわかった場合には、ビタミンのサプリメントを摂ればOK!ということになるのでしょうか?
単純に、栄養素の摂取量が少ないことだけが問題なのであれば、それでも良いかもしれません。食事内容を見直した上で、食事だけでは足りないものに関しては、サプリメントを上手に活用することも有効な方法の一つであると言えるでしょう。
しかし、その前に、忘れてはならないのが、なぜ、たんぱく質やビタミンが体内で不足してしまったのかを考えることが大切です。
なぜなら、食べ物を「摂取」するということと、それが体内に「吸収」されて実際に体内の細胞にまで入るということは、大きく違います。「摂取」するだけでは、食べ物を口の中に入れただけで、まだ体内には入っていません。一方、「吸収」とは、食べたものが消化・分解されて、体内に取り込まれたということを意味します。
胃酸が不足しているせいで消化が悪く、食べたものを十分に分解できていないのかもしれないし、腸に炎症が起きているせいで栄養素の吸収が悪くなっているのかもしれないし、重金属が体内に蓄積しているせいで栄養素の代謝が阻害されているのかもしれないし、これらの原因がお互いに影響しあっているのかもしれないし、そもそも、なぜ胃酸が不足してしまうのか?なぜ腸に炎症が起きているのか?なぜ重金属が蓄積しているのか?ということになるわけです。
「何を食べるか」よりも、いかに「消化、分解、吸収」するか。
そして、それをいかに代謝させるか、ということが、ものすごく大切であるということですね。