細胞のダメージを与え、老化や病気の原因となる「酸化ストレス」から身体を守るための栄養素と食事について。
酸化ストレスから身体を守る栄養素とは?
「酸化ストレス」の害を食い止めるのに役立つのが、食品に含まれる抗酸化物質です。抗酸化物質は体内に入ると、細胞膜の脂肪酸を保護する助けとなります。抗酸化物質として知られている栄養素は、ビタミン類(C・E・A)、植物に含まれるフィトケミカルや、グルタチオンなど。これらの物質は、体内の活性酸素と結びつくことで、細胞の酸化を防いでくれます。
特に、身体の細胞の中で特に酸化ストレスの影響を受けやすいのが赤血球です。血液検査の結果から溶血が疑われる場合は、抗酸化対策がとても重要となります。
①ビタミンC
ビタミンCは水溶性抗酸化物質として、細胞の内側や体液中などで活性酸素を中和する働きをしてくれます。生体内では還元型の「アスコルビン酸」という形で存在します。アスコルビン酸は、電子を失いやすい性質を持ち、自らが酸化することで体内の酸化を食い止め、酸化ダメージを防ぎます。
また、活性酸素と結びついたビタミンEは、ビタミンCの働きによって再び抗酸化力を回復して活性体になることができるため、ビタミンEとビタミンCと一緒に摂ることで、抗酸化力が一層高まります。
ビタミンCはかんきつ類やアセロラ、キウイ、イチゴ、キャベツ、じゃがいもなどに多く含まれるほか、ビタミンCを効率よく摂取するためのサプリメントも広く利用されています。
尚、人間は体内でビタミンCを作ることができない代わりに、抗酸化物質として働く尿酸を作り出していると言われています。尿酸値が高すぎれば高尿酸血症となってしまいますが、逆に尿酸値が低くなりすぎている人は抗酸化力が低く活性酸素を除去する力が弱くなっているということが予測されます。
②ビタミンE
ビタミンEにも高い抗酸化作用があり、脂溶性抗酸化物質として主に細胞膜の抗酸化に働きます。体内の細胞が酸化ストレスにさらされると、まず、細胞膜の脂質が酸化されて細胞膜が弱くなり、生体活動の低下につながるのですが、ビタミンEが細胞膜に存在することで、それを防いでくれます。同時にセレンや亜鉛などのミネラルは、抗酸化酵素や解毒反応の補因子として働きます。ビタミンEは、未精製穀物、小麦胚芽、種子類、緑黄色野菜、ナッツ類、多価不飽和植物油(大豆油や紅花油)、卵黄など、様々な食品に含まれています。尚、ビタミンEをサプリメントとして摂る場合、人工的に作られた合成ビタミンEは、小麦胚芽や植物油から抽出して作られた天然ビタミンEに比べて、生理活性が劣ることがわかっています。
③ビタミンA
ビタミンAも、脂溶性抗酸化物質として、細胞膜などで抗酸化作用を発揮し、がんなどを防ぐことでも注目されています。また、ビタミンAはたんぱく質の合成や細胞の分化にも関わっています。ビタミンAは、卵、レバー、魚などに豊富に含まれます。ベータカロテン(ビタミンAの前駆体)として摂取する場合には、ほうれん草や色の濃い緑黄色野菜、かぼちゃ、にんじん、オレンジ色の果物などに豊富に含まれます。ビタミンAの小腸での吸収率は80~90%であるのに対し、ベータカロテンの吸収率は、約1/3程度(低いものでは10%、高いものでも30~60%)であるといわれています。そのため、ビタミンAとして摂取したほうが効率は良いと言えます。ただし、ビタミンAは脂溶性ビタミンであるため、過剰症を引き起こしやすいうえに、動物性食品のカロリーやコレステロールの過剰摂取も気をつけるべきでもあります。一方、ベータカロテンは、低カロリーで食物繊維も豊富な植物性食品由来のものであり、必要量のみ体内でビタミンAに変換されるため、過剰摂取による害の心配が少ないという利点があります。一般に、ビタミンAとベータカロテンを半々程度で摂ると良いと言われています。
④フィトケミカル
果物や野菜の植物栄養素に含まれるフィトケミカルも、重要な抗酸化物質源となります。フィトケミカルには、たくさんの種類がありますが、鮮やかな色が特徴のカロテノイドや、お茶に含まれるカテキン、赤ワイン含まれるアントシアニン、ベリー類に含まれるプロアントシアニジンなどが有名です。
⑤コエンザイムQ10
エネルギーを生み出すために欠かせないコエンザイムQ10は、エネルギーの代謝時に発生する活性酸素を除去する抗酸化物質としても重要な役割を持ちます。コエンザイムQ10 をサプリメントで摂ることは、スポーツにより大量に発生した活性酸素を取り除きたい時や、持久力を高めパフォーマンスを維持したい時にも有効であると言われています。抗酸化のためには、ビタミンCやビタミンEとともにコエンザイムQ10を摂ることが効果的です。
⑥グルタチオン
グルタチオンは、抗酸化力の高いサプリメントとしても注目されている栄養素の一つです。グルタチオンは、肝臓や他の細胞で作られます。アミノ酸(グルタミン酸、システイン、グリシン)が連なってできたトリペプチドの一種で、グルタチオンには、酸化型ビタミンC(さび取りをして疲れたビタミンC)を還元型ビタミンCに戻す(もとの元気な形)作用があり、活性酸素によるダメージから細胞を守る抗酸化作用の他、肝機能を高め解毒力を高める働きもあります。グルタチオンは、ホウレンソウ、キャベツ、きゅうり、カボチャ、牛レバー、ブロッコリー、酵母、キウイフルーツ、アボカドなどに多く含まれますが、食品の鮮度や加熱調理などによっても変化すると言われています。
日本では1969年より医薬品の原料として市販され、現在でも日本では医薬品として扱われています。(海外ではサプリメントの素材としても広く知られています)