生化学の教科書に必ず出てくる「ATP」とは、いったいなんぞや?
という話をなるべくわかりやすく解説したいと思います。
「ATP」って何??
「ATP」を一言でいうと「生体のエネルギー通過」。
いわば、エネルギーの元になる「電池」みたいなものです。
私たちが生きて活動するためのエネルギーは全て、「ATP」(アデノシン3リン酸)という物質の中に蓄えられているのです。
ATPはすべての生物のエネルギー源となっていて、地球上に生物が誕生した時から使われていたといわれています。
「ATP」は「アデノシン」と3つのリン酸基からできている
(ここは化学の勉強が好きな人以外は読み飛ばしてください)
ATPの構造は、核酸とリボース(五炭糖)で構成される「アデノシン」と呼ばれる物質に、3つの「リン酸基」が結合したもの。
上の図の左側の赤字の部分が、3つの「リン酸基」です。
このリン酸の結合部位には化学的に非常に高いエネルギーが蓄えられていて、「高エネルギーリン酸結合」と呼ばれます。
生物はこの3つのリン酸基のうちの3番目のリン酸基を切り離すことで、
エネルギーを生み出して利用しているわけです。
この反応を行うときには「ATP分解酵素」(ATPアーゼ)と呼ばれる酵素が必要です。
酵素とは、化学反応において自身は変化せずに反応を進める働きのある物質のことで、「触媒」(しょくばい)とも呼ばれます。
「ミトコンドリア」のおかげで動物は進化した?!
カラダがエネルギー不足になると、慢性的な疲れや疾患の原因になります。
十分なエネルギを生み出すためには「ミトコンドリア」の機能を高めることが大事です。
「ミトコンドリア」とは、細胞の中で酸素を使ってエネルギーを生み出すいわば「エネルギー工場」となる小器官です。
私たちがエネルギーを生み出す仕組みには、
①酸素を使わずにミトコンドリアの外で行われる代謝(嫌気的代謝。解糖系とも呼ばれます)
②酸素を使ってミトコンドリア内でエネルギーを作る代謝(好気的代謝)
の2通りの方法があります。
①の酸素を使わずミトコンドリアの外で行われる代謝の場合、
1分子のグルコースから合計2分子のATPしか産生されません。
一方、②酸素を利用してミトコンドリアで酸素を使って代謝が行われた時、
1分子のグルコースから最大で32分子のATPを生み出すことができます。
(以前の高校の教科書には36分子と書いてあったと思いますが、
現在はこの計算法の見解が変わっていて、
産生されるATPの厳密な数を覚える意味はないと言われているようです)
つまり、ミトコンドリア内の好気的代謝(酸素を使う代謝)の効率は非常に高く、解糖系のみの場合に比べて同じ1分子のグルコースから15倍前後のエネルギーを生み出しているわけで、ミトコンドリアがなければ動物の進化と繁栄は起こらなかっただろうと言われています。
実際に、ミトコンドリア機能が低下してATPがしっかり産生されていないと、エネルギー不足になって慢性的な疲れを感じたり、肩こりや頭痛といった身近な不調だけでなく、様々な疾患を引き起こすことになります。