鼻うがい健康法とは?
↑上の二つの記事でも書いている「上咽頭炎」のことをもっと詳しく知りたいと思った方におすすめなのが、内科医の堀田修先生が書いた「病気が治る鼻うがい健康法」という本です。
風邪のひき始めにつきものの、喉の痛み。
「喉の痛み」、というと、扁桃腺の炎症が引き起こしていると考える方も多いかもしれませんが、実際には、扁桃の炎症よりも、上咽頭の炎症が痛みを引き起こしている場合が多いそうです。
そのため、風邪の予防のためには、一般的に行われている喉うがいよりも、鼻の奥の上咽頭の部分を洗浄できる「鼻うがい」の方が、実は数段効き目があるのです。
上咽頭炎と、IgA腎症の関係
この本の著者の堀田修先生は、腎臓病を専門とする内科医で、約30年間にわたり患者さんを診察する中で、IgA腎症という腎臓病が、扁桃炎や上咽頭炎によって引き起こされているのではないかということを突き止めました。
腎炎の原因は不明とされているものが多いそうなのですが、その発症メカニズムには、人間の体内の免疫システムが関わっていることも少なくないと考えられており、腎炎を根本的に治療するためには、腎臓だけを見るのではなく、免疫システムに関わる細菌やウイルスなどが侵入してくる場所=咽喉や鼻で起こっている感染や炎症にも目を向けなくてはならないという視点から、このような考えに至ったといいます。
本の中では、上咽頭炎についての詳しい説明や、上咽頭炎を治療することでIgA腎症が治るメカニズム、自律神経と上咽頭の関係、上咽頭炎の治療法から自分でできるホームケアや気を付けたいことなど、非常に興味深いことがたくさん書かれています。
また、実際に上咽頭炎を治療することで、IgA腎症だけでなく、アトピー性皮膚炎や掌蹠膿疱症、潰瘍性大腸炎、ネフローゼ症候群、アレルギーなどが良くなったという実例も挙げられています。
人体の不思議?! 病巣感染について
身体のどこかに細菌などに感染した病巣があって、それが原因で病巣とは違う離れた場所に病気が起こることを、「病巣感染」といいます。
IgA腎症と扁桃炎・上咽頭炎の関係もこれにあたり、IgA腎症を治療するには、炎症を起こしている扁桃を摘出したり、上咽頭炎を治すことが有効であるということになります。
このような「病巣感染」の考え方は、古くは医学の父と呼ばれるヒポクラテスの時代からあり、ヒポクラテスは、個々の患者さんを注意深く観察することで、喉の病気と関節リウマチとの関係を見出したのだそうです。
上咽頭炎を予防する生活習慣
堀田先生は、慢性上咽頭炎を予防するためには、まずは何はなくとも禁煙すること、とされています。
なぜならば、喫煙者のほとんどは、ひどい慢性上咽頭炎を患っているからだそうです。
また、鼻うがいを習慣づけること、ハウスダストなどを避けてきれいな空気を吸うこと、首を冷やさないこと、首のコリをとること、口呼吸をやめること、そしてストレスをためない生き方をすることなどを挙げています。もちろん、鼻うがいのやり方も詳しく解説されています。
首のコリに関しては、上咽頭炎と首の筋肉は非常に関係が深く、上咽頭炎があると、上咽頭と同じ高さにある耳下部の筋肉が緊張するのだそうです。そのため、耳下部の胸鎖乳突筋付着部付近を人差し指・中指・薬指の3本でやや強く押すと、上咽頭炎がある患者さんは痛みを感じることから、上咽頭炎の診断方法の一つとしてこの触診が使われているとのこと。
首を温めると、筋肉の緊張(コリ)がほぐれ、慢性上咽頭炎の様々な症状が軽減するとしています。もちろん、普段から首を冷やさない心がけも大切です。
上咽頭炎の治療
上咽頭炎の治療は、塩化亜鉛というものを患部に直接塗るという方法で行われます。全国でもこの治療を行っている耳鼻科は少ないようですが、この本の巻末には慢性上咽頭炎の塩化亜鉛治療を行っている医療機関が載っているので、気になる方は一読してみることをおすすめします。
(最近では塩化亜鉛よりも痛くない、塩化マグネシウムを用いる方法も注目されています。)