血液検査項目の一つ、「血清鉄」とは何か、また、血清鉄の値からどんなことを読み取ることができるのかについて説明します。
血清鉄とは?
血清鉄(Fe)とは、文字通り血清中に存在する鉄の事です。鉄は、鉄イオンのままの状態では毒性が強いので、「トランスフェリン」と呼ばれる鉄輸送専門のたんぱく質と結合した状態で全身に運ばれていきます。血液中でトランスフェリンと結合した鉄のことを、血清鉄といいます。
「UIBC」と「TIBC」って何??
血液検査項目の中で、「UIBC」や「TIBC」という項目を見たことがある方もいるかもしれません。
UIBC(Unsaturated iron binding capacity)とは、「不飽和鉄結合能」とも呼ばれます。これは、鉄と結合していないトランスフェリンの量を表します。
一方、TIBC(Total iron binding capacity)とは、「総鉄結合能」とも呼ばれます。これは、血清鉄とUIBCを表したものです。つまり、鉄と結合したトランスフェリンと結合していないトランスフェリンも全部合わせたものです。
血液データの血清鉄の見方
血清鉄は、体内の鉄の過不足を見る検査ではなく、鉄の代謝を見るためにも使われる検査です。
血清鉄は、だいたい100前後が目安となりますが、変動が大きいため解釈に注意です。鉄は代謝が激しく、日中どんどん使われていくため日内変動も大きく、朝は高く夜にかけて低くなるという性質があります。逆に、鉄と結合が離れたUIBCの値は、朝に低く夜には高くなっていきます。
ちなみに、UIBCの正常な値はだいたい200前後、TIBCは300前後が目安です。
鉄欠乏があると、血清鉄は低くなります。その代わりに、UIBCは高くなっていきます。鉄と結合していないトランスフェリンばかりが増えた状態ですね。また、体内に炎症がある場合、鉄の利用を抑え鉄を貯蔵鉄に蓄えるような機構が働くので、血清鉄は低くなる一方、フェリチン値は高くなっていきます。
次に、血清鉄が高値の場合を考えてみましょう。細胞の酸化ストレスが大きく、赤血球が壊れる「溶血」が起こっているような場合、血清鉄は網赤血球や間接ビリルビンと共に上昇する傾向が見られます。溶血によって壊れた赤血球から鉄が出てきたものとトランスフェリンが結合して血清鉄が増えた状態ですね。この場合、結合していないトランスフェリンは少なくなる、つまり、UIBCは低くなります。