慢性頭痛の9割は、「首こり」が原因?!
いつも頭痛薬が手放せない、何をやっても頭痛が消えない、頭痛のせいでやる気が出ない、、
頭痛って、本当に辛いですよね。
日本ではおよそ3000万人の人が、慢性的な頭痛で悩まされていると言われています。ざっと計算して3人に1人と考えると、ものすごい数字です。最近では子どもでも頭痛を訴える子が増えていると言われています。
脳神経外科医の青山尚樹先生によると、慢性的な頭痛に悩んでいる人を日々診ているうちに、ある共通点に気が付いたと言います。それは、首の筋肉の緊張、つまり「首こり」があるということです。
頭痛は、「緊張型頭痛」や「片頭痛」といったタイプわけがされていますが、タイプを問わずほとんどの人に首こりがあります。その中には、普段から首の痛みや凝りを自覚している人もいれば、自覚していない人であっても、診察時に触診をすると圧痛を感じたり、痛みは感じなくても筋肉の緊張が見られるといいます。
その首のこりを取ることで、多くの患者さんの痛みがなくなったり軽減したりした経験から、青山先生は著書「頭痛は『首』から治しなさい」の中で、「慢性頭痛の9割は首凝りが根本的な原因」としています。
現在、日本の医療機関では「慢性頭痛ガイドライン」に沿って頭痛をいくつかのタイプに分類し、治療が行われていますが、この本の中では頭痛のタイプに関係なく、痛みの大元の部分は首の後ろの部分の筋肉のこりにあるとしています。
痛みはどこからやってくる?
緊張型頭痛や偏頭痛の痛みの情報は、主に第1~3頚神経(頸神経の上から3つ)から脳幹の「三叉神経脊髄路核」という部分に入る→そこから大脳皮質の「皮質知覚野」と呼ばれる痛みを感じる部分に情報が伝わり、痛みとして認識されます。
つまり、頭痛のタイプに関わらず、首の筋肉が緊張している状態が続くと、その刺激が1~3頸神経を介して三叉神経脊髄路核に情報を持続的に伝え、頭痛が起こりやすい状態になり、脳の感受性を強くしてしまう、つまり、首回りの緊張状態があるとちょっとした刺激でも強く反応して頭痛が起こりやすくなってしまうというわけです。
これは、頭痛のタイプに関係なく、緊張型や片頭痛、群発頭痛など、すべての慢性頭痛に当てはまる状態です。
なぜ「首こり」が起きるのか
首こりの起こる原因は、首回りの血行不良によって筋肉が緊張することでおこります。では、なぜ血行不良が起こるのでしょうか。
・日常的に首に負担がかかっている
成人の頭の重さは5~6kgもあります。首の筋肉は、この重い頭を支えたり頭を動かしたりするためにに常に働き続けています。私たちはパソコンを使ったりスマホを使ったり物を書いたり手を使う作業をするときは必ず、頭を少し前傾させた姿勢になっています。この時、首の後ろの部分の筋肉に負担がかかります。むち打ち症やケガによって頸部に負担がかかり、首のこりを引き起こすこともあります。
・ストレートネック
頸椎は通常、前後にわずかに湾曲した形になっていることで、首への負担を和らげる構造になっているのですが、この生理的な湾曲が失われた状態をストレートネックといいます。生まれつきの頸椎の形態に加え、筋肉の過緊張による凝り、間違った姿勢や、合わない枕などによって引き起こされると言われています。猫背で背中が丸くなっている人は、自然と頭が前に出てきてストレートネックになりやすいので要注意です。
女性の方が男性よりも頭痛を起こしやすい原因の一つとして、女性の方が首が細く筋肉量も少ないためストレートネックになりやすいということも考えられます。
・頸椎のずれ
首の骨のわずかなずれによって血行不良がおこると、首の筋肉が緊張して首こりが起こります。また、頸椎のずれが神経に刺激を与えることで頭痛が起こりやすくなります。このずれを整体やカイロで継続的に調整していくことで慢性頭痛が改善される例が多数報告されています。頸椎のわずかなズレは、日々の姿勢や自律神経、精神状態なども影響して起こるとも言われています。
・冷え
後頭部や頸部を冷やすような生活習慣をしていると、筋肉の血管を収縮させ血行不良となり、筋肉のこりや緊張を高める原因となります。冬は首にマフラーを巻いたり、夏でも冷房で首を冷やさないようにしましょう。冷えが気になる場合は寝ているときも首を冷やさないように、タオルを巻いて寝るのもおすすめです。
・痛み止めの使い過ぎ、または、慢性的に冷湿布を使っている
痛み止めや冷湿布は、使いようによっては辛い痛みを軽減させてくれるものですが、これらは血流を悪くしてしまうので、長く使い過ぎると慢性的な血流障害によって筋肉の緊張を高め、かえって痛みを増長させる原因となることがあるので要注意です。症状が辛い時に短期的に使うのは良いかもしれませんが、長期にわたって冷湿布やインドメタシンなどの塗り薬を使用することはおすすめできません。
・歯のかみ合わせ
噛んだり食いしばる動作には、あごの筋肉だけでなく、首の筋肉も関係しています。そのため、歯のかみ合わせが悪いと首の筋肉にも負担がかかります。寝ている間に歯ぎしりをしている人や、気が付くと歯を食いしばっている人、顎関節症の人なども、後頚部の筋肉の緊張を高める大きな原因となるため注意が必要です。(夜間の低血糖が食いしばりを引き起こしているというケースも多いと考えられます。「眠れない、食いしばり、寝汗は低血糖のサイン?!」も参考にしてみてください)
・ミトコンドリア機能が低い
ミトコンドリア機能が低い=細胞機能が低下している ということなので、当然血流も悪くなり、凝りを引き起こしやすい状態になってしまいます。
・ビタミンE不足による血行不良
ビタミンEには血液をサラサラにする働きがあり、不足すると血行障害による肩こりや頭痛、冷え性などもおこりやすくなります。
・マグネシウム不足
マグネシウム不足は筋肉の緊張に大きく関係します。マグネシウム不足について詳しくはこちら
・自律神経バランスが悪い
上記のように骨格や筋肉の問題、栄養不足が頭痛と関係しているケースもとても多いのですが、忘れてはならないのが自律神経の問題です。
「自律神経」には交感神経と副交感神経があり、呼吸や消化や循環など、生命維持に欠かせない器官の機能を絶えず調節しています。交感神経は、活動しているときや、緊張しているときなどに優位に働きます。副交感神経は、眠っているときや休息しているとき、気持ちが落ち着いているときに優位になります。
末梢血管に関しては、
交感神経優位→末梢血管が収縮し血圧が上昇
副交感神経優位→末梢血管が拡張し血圧が低下
というように働きます。自律神経の変動は一定ではなく、通常は常にどちらかに振れており、身体の状態をコントロールしています。交感神経と副交感神経のどちらが良いvs悪い、ではなく、どちらも生きていくために欠かせないものなのですが、交感神経が過度に緊張状態が続くと血流が悪くなってしまい、首こりの原因となります。
(血液検査データから自律神経バランスを調べる方法→「血液検査の好中球とリンパ球のバランスからわかること」)
交感神経を優位にする要因とは
もともと日本人は、体質的に交感神経優位になりやすい人が多いと言われています。それに加え、ストレスを感じているとき、仕事が忙しい時、冷え、カフェインの摂りすぎ、睡眠不足の時などは、交感神経の過度な緊張状態を招きます。
慢性頭痛に悩む人は、いつも頑張りすぎて交感神経を働かせすぎているのかもしれません。基本的なことになってしまいますが、しっかりと睡眠をとる、働きすぎや頑張りすぎを避ける、マッサージを受けたりしてリラックスする時間を作る、など、いつも頑張っている身体を休めてあげることを心がけましょう。
そして体内の栄養状態は、自律神経に大きな影響を与えます。
例えば、腸内環境悪化や低血糖、鉄不足、慢性炎症、抗酸化力不足などは全て、自律神経バランスを乱す原因の一つとなります。慢性的な頭痛がなかなか治らないという方はぜひ、ご自身の生活習慣や食生活も含め、自律神経を整える対策をしてみてください。
まとめ
・頭痛のタイプに関わらず、慢性頭痛がある人の9割に首の「こり」が見られる
・首の「こり」の原因は、首回りの血流障害である
・首回りの血流障害の原因となるのものは、頸椎のずれや日頃の姿勢、首を冷やす生活習慣、痛み止めや冷湿布の使い過ぎ、歯のかみ合わせ、交感神経の過緊張、低血糖、マグネシウム不足など、様々である。
・頭痛に悩んでいる人は身体が無理して頑張りすぎているサインを出しているのかもしれません。生活習慣や食生活を見直して、自律神経バランスを整えるべし。