血液データを読む上で重要な「溶血」について解説します。
「溶血」とは?
細胞の中で最も酸化ストレスを受けやすいのは、赤血球です。
溶血とは、赤血球が何らかの原因で壊れ、赤血球中に含まれるヘモグロビン(血色素)が血液中に出てきている状態のことです。
赤血球の細胞膜が壊れやすくなっているということは、他の細胞膜も壊れやすくなっているということが言えます。つまり、血液検査の結果を見て溶血があるかどうかを調べることで、細胞膜の丈夫さを確認するのに使えます。
このように細胞膜が壊れやすくなっている状態は、「膜障害」と呼ばれます。
溶血があると高値になる検査項目
酸化ストレスが大きく細胞膜が弱くなっていて溶血があると、
・間接ビリルビン(0.6以上は溶血の可能性大)
・網状赤血球
・血清鉄
・LDH
などが高値になります。間接ビリルビンは0.6を超えるようだと溶血の可能性が高いです。(まずは従来の評価方法で臓器トラブルがないことを確認していることを前提としています)
その他にも、フェリチン、カリウム、AST、尿酸、総たんぱくなども溶血があると高値になりますので、間接ビリルビンなどの値から溶血が疑われる場合は、これらの値もマスクされて高くなっているということを考慮して血液データを見る必要があります。
溶血があると低値になる検査項目
逆に、溶血があると低値になるものもあります。
・ALP
・UIBC
などは、溶血があると値が低くなります。
赤血球が壊れやすくなる原因とは
赤血球が壊れやすくなる=つまり全身の細胞膜が弱くなってしまう最大の原因は、酸化ストレスです。
活性酸素の影響によって細胞膜が壊れやすくなってしまっているということですね。また、たんぱく質やコレステロール、EPAやDHAといった、細胞膜の栄養となるものが不足していても、細胞膜が弱くなって溶血が起こりやすくなります。間接ビリルビンが高く、コレステロール値が低い人は要注意です。
さらに、尿酸値が低い人は抗酸化力が弱く、活性酸素のダメージをうけやすくなってしまいます。尿酸と言えば、高尿酸血症によって起こる痛風のイメージが強いかと思いますが、実は尿酸には抗酸化物質としての役割もあるため、低すぎるのも問題なのです。
中には、ランニングなどの激しい運動をたくさんする方は、着地の衝撃で赤血球の寿命がまだきていないのに壊れてしまっているという場合もあります。
今すぐできる活性酸素対策
活性酸素は、体内の代謝過程で必ず生まれるものなので、生きている限り、活性酸素による酸化ストレスを避けて通ることはできません。
私たちの身体には、本来は活性酸素を制御する機序が備わっているのですが、現代生活では、活性酸素が過度に生成される状況になることが多く、除去する作用が追い付かなくなり細胞の損傷につながってしまうと言われています。
活性酸素のもととなるものとしては、ストレス・X線・紫外線・大気汚染・煙草の煙・水質汚染・工業溶剤のような環境毒素・重金属・農薬・水素化したもの(トランス脂肪)や酸化した食物油・アルコール・激しい運動など、様々なものが挙げられます。
溶血が疑われる場合は、まずは何がストレス源になっているのかを考えましょう。
そして、抗酸化力を持つ栄養素をしっかり摂ることが大切です。中でも、果物や野菜の植物栄養素に含まれる「フィトケミカル」は、重要な抗酸化物質源となります。フィトケミカルにはたくさんの種類がありますが、例えば、鮮やかな色が特徴のカロテノイドや、お茶に含まれるカテキン、赤ワイン含まれるアントシアニン、ベリー類に含まれるプロアントシアニジンなどが有名です。
細胞膜を丈夫に保つには、不足しがちな「オメガ3」の脂肪酸を摂ることも大切です。
また、抗酸化作用のある栄養素の中でも不足しがちなビタミンCやビタミンEなどをサプリメントから摂ることも有効です。
活性酸素が多い人は、VEなら400~600IU/日 、VCは3g/日(分けて摂る)ぐらいを摂ると、抗酸化作用が期待できると言われています。
コレステロールやたんぱく質不足もある場合は、食事内容を見直すとともに、胃腸の状態を整えて消化吸収力を改善するということも大切です。
まとめ
・溶血がある時は、赤血球だけでなく全身の細胞が弱くなっている可能性が高い
・溶血がある場合、間接ビリルビン・網状赤血球・血清鉄などが高値になる。溶血が疑われる場合は、データのマスクを考慮して血液データを読む必要がある。
・溶血の原因は、活性酸素の影響・栄養不足による細胞膜の脆弱化・抗酸化力不足(尿酸不足)・過度な運動の影響などが考えられる。
・細胞を元気にするためには、活性酸素対策をする。野菜や果物に含まれるフィトケミカル・ビタミンC・ビタミンE・オメガ3系オイルを積極的に摂ることも有効。
・溶血がある場合、胃腸の状態を整えて栄養素全般をしっかりと消化吸収できる身体を作ることも欠かせない。