よく眠れない、食いしばり、寝汗などの症状は、夜間低血糖のサインかもしれません。夜間の血糖コントロールのメカニズムや、夜間低血糖を改善するための方法について解説します。
夜間低血糖のサインとは?
血糖値は身体の中で常に一定になるよう調節されています。物を食べた後やお腹がすいている時など、多少の変動がありますが、健康な人であればだいたい80~140ぐらいの間で調節されているのが普通ですが、低血糖症があるともっと値が低い時間が出てきて、色々な不快症状を引き起こします。
特に、低血糖症があると、睡眠の質が落ちたり、夜間の症状が出るようになります。
なぜなら、日中はお腹がすいたら食べることができますが、寝ている時は糖質を外から補給することができませんので、自分の身体でなんとかするしかないのに、そこがうまくいかなくなるからです。
寝ている間の低血糖があるとどのような症状が出るかというと、食いしばりや寝汗、嫌な夢、動悸などが挙げられます。
夜間にぐっすり眠れていないので日中の倦怠感がひどくなったり、筋肉が緊張しすぎているので頭痛や肩こり、腰痛がひどくなったりすることもあります。
高齢の方で、夜中の1~3時の間ぐらいになるとトイレに起きてしまうという方がいらっしゃいますが、実際は低血糖からの夜間覚醒だったりするケースも非常に多いです。この場合、夜間の低血糖を安定させるだけでトイレの回数が減ってよく眠れるようになります。
夜間の血糖コントロールのメカニズム
私たちが寝ている間も、身体が頑張って血糖値をコントロールしてくれているわけですが、夜間の血糖維持のために主に使われているのがコルチゾールと成長ホルモンです。
夜間のコルチゾールと成長ホルモンの量は変動していて、そのバランスによって血糖がうまくコントロールされています。
・ストレスに対処して、元気を生み出す「コルチゾール」
コルチゾールは身体の中で作られるステロイドホルモンで、副腎皮質で作られ分泌されます。ストレスを受けた時に脳からの刺激を受けてたくさん分泌されることから、「ストレスホルモン」とも呼ばれます。
また、「元気を作るホルモン」でもあるので、適度なコルチゾールの分泌は身体が元気に活動するために欠かせません。
コルチゾールのピークは朝の8時で、日中から夜中にかけてだんだん落ちていき、次の日の朝の8時に向かってまた上がっていきます。「副腎疲労」が悪化してコルチゾールをしっかり出せなくなってくると、身体の元気が全くなくなって朝起き上がれなくなったり、うつ状態になったりしてしまいます。
コルチゾールはストレス時だけでなく、ケガ、炎症、感染などがあるときにも需要が増え、相対的に不足しやすくなります。
・血糖調節にも使われる「成長ホルモン」
成長ホルモンは、子どもの成長期に重要なホルモンですが、それだけでなく大人の身体でも作られ、血糖値の維持などを行うためにも欠かせないホルモンです。成長ホルモンは脳の下垂体前葉で作られます。
成長ホルモンの分泌は食事を摂ることで上がりますが、寝ている時も身体が量を調節して分泌しています。
成長ホルモンは寝てから2時間の、ノンレム睡眠時にピークになることが知られています。ノンレム睡眠とは、眼球運動のない深い眠りのことです。つまり、ぐっすり眠れないと成長ホルモンが充分に分泌されなくなってしまいます。
例えば、寝る前にスマホを集中して見ていたりすると、脳が興奮状態になって眠りが浅くなり、成長ホルモンが出にくくなったりします。
子どもの場合、泣いたり暴れたりした日や、おでかけして興奮したときなどは、心身が興奮しすぎていてよく眠れない、といったことがありますよね。怖い話を聞いたときや、いじめにあった、大人であれば辛い仕事が続いている、などといったこともすべて過剰な交感神経刺激となって、眠りの質に影響します。
そして、成長ホルモンは明け方に向かって分泌が減っていくのに対して、コルチゾールは目覚める時間に向かって徐々に上がっていくことで、血糖値が丁度よく維持される、という仕組みになっています。
アドレナリン・ノルアドレナリンが夜間の低血糖症状を起こす
寝ている時間の血糖調節の仕組みからもわかるように、夜間の低血糖症状が起こる理由はコルチゾールや成長ホルモンの分泌がうまくいかなくなることによって起こります。
過剰なストレス、慢性炎症、副腎疲労、疲れすぎ、極端な糖質の暴飲暴食、寝る前のスマホなどは全て、夜間の血糖調節に影響を与えます。
夜間低血糖になると、身体は頑張ってアドレナリンやノルアドリンを出してなんとか血糖を維持しようとします。
アドレナリンやノルアドレナリンは、「闘争と逃走」(戦うか逃げるか)のホルモンとも呼ばれ、身体がストレスを感じた時や危機状態に陥った時に対応して放出されるホルモン。
これらが分泌されると、夜間の動悸、寝汗、悪夢、くいしばりなどの症状が出るようになるのです。寝ている間も身体が常に緊張状態ですので、筋肉に力が入って食いしばり、頭痛や肩こり、腰痛にもなりやすいですし、朝起きたときに手を広げにくい、といった症状が出る方場合は、寝ている間に低血糖になっていて手をぐっと握りしめてしまっているのかもしれません。
アドレナリンやノルアドレナリンは、私たちが生きていくためにもちろん欠かせないものではありますが、過剰な分泌はイライラ、うつ状態、漠然とした不安感、焦燥感、パニックなど、さまざまなメンタルの不調を引き起こします。このような不調があると、身近な人、例えば家族とのトラブルも起こりやすくなったりします。
実際、栄養療法の世界では、「メンタルの不調のほとんどは実は低血糖がベースにあるといっても過言ではない」と言われています。
問題は、アドレナリンやノルアドレナリン自体が悪いのではなく、これらが分泌されなくてはいられないような状況を作り出すような食習慣や生活習慣を変えていくということが重要となります。
夜間の低血糖を防ぐ生活習慣
夕方の捕食
低血糖症を防ぐために一番大事なのは食事です。日中の血糖値を安定させ、副腎疲労を改善していくことで、夜間のコルチゾール分泌も少しずつ改善していきます。
ポイントは、日中にお菓子やカフェインが必要になる前に、捕食を少し入れるという方法です。特に、夕方になるとコルチゾール分泌が落ちてきて血糖値が下がりやすくなってきます。
夕方に身体が疲れているな~と感じたときに、いつもカフェインやエナジードリンクを飲んで「ドーピング」をしている人は、ますます低血糖症を悪化させてしまうことになりますので要注意です。
こんな時は、血糖値をガツンと上げるような糖質の多いものをたっぷり食べるのではなく、血糖値が緩やかにあがるように少しずつ食べることがポイントです。
詳しくは、「血糖値を安定させるための食事のポイント」をチェックしてみてください。
二度寝注意
朝のコルチゾールが充分に出ていないと、朝眠い、だるい、起きたくないなどの症状が出やすくなります。
それでも頑張ってなんとか起き上がったけど、やっぱり二度寝してしまったという経験がある方も多いのではないでしょうか。こんな時は、身体は頑張ってアドレナリンやノルアドレナリンを出して一旦血糖値が上昇させたものの、結局頑張り切れずまた血糖値が下がってしまったという状態になっています。このように無理やりアドレナリンやノルアドレナリンを出すのはさらに低血糖症を悪化させてしまいます。
そこで、起きてから何も食べずに頑張って活動をするのではなくて、少し炭水化物を摂ってあげると〇です。そうすることで無駄にアドレナリンやノルアドレナリンを出さずに血糖値を上げることができるようになります。
夜更かし厳禁
睡眠中の血糖値を安定させるためには、寝ている間に成長ホルモンをしっかり分泌させることが大切です。そのためには眠りの時間と質がポイントとなります。
夜遅く寝ると成長ホルモンは十分に分泌されなくなってしまいますので、大人でもできれば10時まで、遅くとも夜11時までには就寝するようにしましょう。寝る直前までスマホのブルーライト刺激を浴びるのも良くないので、なるべく寝る前のスマホは避け、リラックスした状態を作ります。寝る前に深呼吸をするのもかなりおすすめです!
また、眠りの質を高めるには、腸内環境を整えることも欠かせません。詳しくは、「眠れない原因は腸だった?!」も参考にしてください。
まとめ
・夜間低血糖は、よく眠れない、食いしばりや寝汗、嫌な夢、動悸、日中の倦怠感、頭痛や肩こり、腰痛なども引き起こす。
・夜間の血糖はコルチゾールや成長ホルモンのバランスによって調整されていて、これらのホルモンがしっかり分泌されていないと「逃走&闘争」のためのアドレナリンやノルアドレナリンが分泌される。
・夜間低血糖を防ぐためには、血糖値を安定させる食事、夕方の捕食、二度寝や夜更かしをしないで規則正しい生活をする、寝る前にリラックスする、腸内環境を整えるetc.などが有効。
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