血液データを読むときに忘れてはいけない、データの「マスク」(マスキング)について説明します。
データの「マスク」とは
脱水があったり、体内のどこかに微小な炎症が起こっていたり、栄養状態が悪かったりする場合、血液検査の値が本来の値よりも高くなったり低くなったりする場合があります。このような状態を、データの「マスク」(マスキング)といいます。
血液データの測定値は、値を上昇させる因子と下降させる因子のつなひきが行われ、そのバランスによって決まります。
そのため、一見理想値に近い値になっていても、両方の因子が働き合ってそのような値になっている場合もあるため、注意が必要なのです。
例えば、栄養療法を行って体調は良くなったのに一時的にデータが悪くなったようになることもあります。これは栄養状態が改善することによって脱水が補正され、そのようなデータが出ているという可能性も考えられます。
脱水とデータのマスク
一番わかりやすいのは脱水です。脱水があれば、血液が濃縮されているので実際の値よりも計測値が高くなります。
ただし、血糖値やコレステロール値などは、赤血球内と血漿内の濃度が同じ物質を測っているので、脱水があっても値は変化しません。
一方、脱水によって上昇するものの例としては、総蛋白、アルブミン、BUN、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、クレアチニン、LDH、AST、ALT、Fe(鉄)、K(カリウム)、などが挙げられます。
目安としては、総蛋白7.5以上、ヘモグロビン16以上だったりする場合は脱水の可能性が高いと考えられます。
ただし、もしも検査データが理想的な値だったとしても、データのマスクによって値が実際のものよりも高くなったり低くなったりしていることによって見かけ上は丁度良い値になっているという場合もあるため、「この値なら絶対にOK!」などと言うことはできません。
脱水の原因
脱水があると、高血圧や狭心症を引き起こしやすく、血液粘度が高まると血栓を作りやすくなってしまいます。
以下のような状態があると、脱水になりやすいため、注意が必要です。
・検査前の水分摂取不足
・低栄養(低たんぱく)
・肥満傾向
・高血糖で多尿になっている
・利尿剤など薬の影響
データの「マスク」を引き起こしやすいそのほかの因子
脱水の他にも、血液検査の値を変化させる因子は色々あります。
代表的なものの例を挙げると、溶血・肝機能低下・室温放置(血液の保存状態)・運動後の影響・組織障害・成長期・妊娠後期・体質・食後(脂肪食)・ビタミン不足・たんぱく質代謝低下・甲状腺機能低下 etc.
例えば、多少肝臓が悪くても、たんぱく質の代謝低下やビタミンB6不足があると、値が理想的な値になっているということもあり得るというわけです。
血液データを見るときは、このようなデータの「マスク」について考慮しながら見ていくようにしましょう。