「ナイアシン」って、何??
栄養療法において欠かせない栄養素の一つであるナイアシン(ビタミンB3)
ナイアシンは消化管や皮膚、神経の健康のために必須です。
例えば、年齢とともに膝の痛みがでたり、関節炎によって関節の動きが悪くなることを気にする人も多いと思いますが、このような症状にもナイアシンサプリの摂取が有効であるという報告がされています。
ナイアシンによって回復が見込まれる症状
・関節炎
1990年代初頭、アメリカのウィリアム・カウフマン医学博士の研究によると、一日に2~4gのナイアシンアミドによって数百人の骨関節炎やリウマチ関節炎の患者に効果がみられたと報告しています。
カウフマン博士は、ナイアシンアミドによって加齢に伴う関節炎の痛みの軽減、関節の動きや筋力の改善、疲れやすさの軽減がみられるとしていて、これは年齢にかかわらず効果がみられました。
例えば、関節炎がとても重度になっていて血圧を測るために肘を曲げるのも困難だった患者に対して、ナイアシンアミドを一日に複数回に分けて投与したところ、一週間で腕を曲げらるようになったのです。
そこで、ナイアシン投与をやめてプラセボ薬を次の一週間投与したところ、関節はまた元通りに固くなってしまったのでした。
カウフマン博士によると、関節炎に対して一回の大量摂取をするのではなくて、日中起きている間のナイアシンアミドの血中濃度を均一に高く保つために頻回投与をすることが有効だとしています。
ひどい関節炎でベッドから起き上がれないような患者の場合でも、一日総量4gまでを10回に分けて投与したところ、1~3か月で階段を登れるようになりました。
カウフマン博士は、ナイアシンアミド療法が有効かどうかを知るためには、3か月間は続ける必要があるとしています。
・脂質代謝異常
ナイアシン(ナイアシンアミドではなくナイアシン)には、LDL‐コレステロール(俗にいう悪玉コレステロール)と中性脂肪を低下させる作用があることが分かっています。
また、コレステロールが異常に低い人ではコレステロールを上昇させるし、HDL‐C(俗にいう善玉)も上げてくれるので、単にコレステロールを下げるだけでなく理想的に近づけてくれる効果が期待できるというわけです。
さらに、ナイアシンの持つ抗炎症作用も、脳卒中や心血管系の疾患対策として役立つと考えられます。
尚、「オーソモレキュラー医学入門」(エイブラハム・ホッファー)によると、
冠動脈疾患の発生率を減少させるには、ナイアシンの大量摂取(一日2000mg)だけでなく、ビタミンCやビタミンB6、必須脂肪酸、亜鉛も摂るのが賢明である
としています。
(注意:「ナイアシン」というと、ナイアシンとナイアシンアミドの総称として使われることが多い。食事から摂ったナイアシンは肝臓でナイアシンアミドに変換される。関節炎のところで出てきたのは「ナイアシンアミド」ですが、脂質代謝異常に効果があるとされているのはナイアシンアミドじゃなくて「ナイアシン」です)
・血管障害
ナイアシンには血管拡張作用があることから、血管拍動性の頭痛、局所的な欠陥攣縮、黒内障、血栓症、脳卒中、冠動脈疾患、腎炎、動脈硬化などにも効果が期待できるといわれています。
・糖尿病
ナイアシンアミドには膵臓のベータ細胞(インスリンを産生する細胞)の破壊の進行を遅らせ、再生を促進する働きがあると報告されています。
インスリン依存性の一型糖尿病患者においても、ナイアシンアミド(3000mg/日)の投与によって約18%の患者に寛解がみられたという報告もあります。
また、あるマウスの実験によると、18匹のインスリン依存性糖尿病マウスを無作為に2つのグループに分け、1つのグループのマウスには何もせず、もう1つのグループのマウスには毎日ナイアシンアミド40日間投与したところ、ナイアシンアミドグループの方はすべて耐糖能がほぼ正常になり、膵炎もごく軽度にしか見られませんでした。
一方、なにもしなかったグループでは、9匹中6匹に著しい尿糖と重度の膵炎がみられました。そこで、重度の6匹にもナイアシンアミドの投与を開始したところ、そのうちの4匹で尿糖が消滅し耐糖能も改善したといいます。
このことからも、ナイアシンアミドには糖尿病の治療効果が期待できると考えられます。
・アレルギー
重度アレルギーを持つ人は体内の「ヒスタミン」の量が多く、アレルギー物質に対して強い反応が起こることで、アレルギー性のショックを起こす危険性があります。
ナイアシンには体内の「マスト細胞」に貯蔵された「ヒスタミン」を放出させる働きがあります。
食物アレルギー患者は高容量のナイアシンを投与しても大丈夫=それだけ必要量が増していると考えられます。
実際に、重度のピーナッツアレルギーの若者に対して、ビタミンCを一日3回と、数日後からナイアシン50mgを一日3回投与してナイアシンを徐々に増やしていき、600mgを一日3回摂取するまでになったとき、ピーナッツによるアレルギー反応が出なくなったという報告があります。
ビタミンCも投与する必要があるのは、ナイアシンによって放出されたヒスタミンを破壊しヒスタミンによる体への負荷を減らすためです。
・多発性硬化症
ナイアシンアミドには神経の変性を防ぎ、多発性硬化症などの神経疾患の治療に役立つ働きもあることがわかっています。
また、ナイアシンは難病の一つと言われている重症筋無力症などにも有効であると報告されています。
神経細胞の健康のためには、ナイアシン以外のビタミンB群も必要となりますので、併せて高容量のビタミンB群を摂ることも必要です。
また、細胞機能を高めるためにビタミンCやE、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などの栄養素の補充も必要であると考えられます。
・子どもの学習障害・行動障害・チック症
子どもの学習障害や行動障害、チック症などにおいてもナイアシンは重要な栄養素の一つであることが分かっています。
高容量のナイアシンを摂るときの注意点
ナイアシンの効果を得るためには、通常よりもかなり高容量のナイアシンを摂取する必要があるといわれていますが、一時的な副作用として吐き気や「ナイアシンフラアッシュ」(顔がほてる、汗をかく、蕁麻疹が出るといった症状)が起こる場合があります。
特に、重要な栄養素であるたんぱく質や鉄、ビタミンCなど、そのほかの栄養素がかなり不足しているような人がいきなりナイアシンをたくさん摂るのは危険であるといわれています。
尚、ただのナイアシンよりも、ナイアシンアミドの形でとった方がナイアシンフラッシュの症状は出にくくなります。
「オーソモレキュラー医学入門」によると、一日の摂取量の目安は大人なら一日3回、食後に1000mgずつからはじめて、もしも治療効果が出ないのであれば一日3000mg~6000mgまで増やすとしています。(これを3回に分けて摂取。もしも吐き気などが出るようなら、一日4000~5000mgに減らす)
また、「藤川メソッド」や「うつ消しごはん」でも有名な藤川徳美先生によると、精神疾患やリウマチ、腎臓病などの治療の場合、まずはプロテインを一日20g×2回、ビタミンC1000mg×3回を問題なく飲めるようになってから、ナイアシンアミドを500mg×3回を継続し、その後500mg×6回に増量して2~3か月継続する
としています。
このように、かなりたくさんの医学的効果が期待できるとされているナイアシンではありますが、継続的に大量のナイアシンを服用し続けることによるリスクも考えられますので、長期にわたって医療レベルでの使用をする際は医師に相談をして体内の状態を確認しながら摂取を続けるかどうかを判断していくことをおすすめします。
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