ナイアシン不足のせいで疲れやすい?!ナイアシンの不足原因、対策について。

疲れやすい、だるい、口内炎、舌が赤くなって痛い、肌荒れ、胃腸の調子が悪い、イライラしやすいなどの症状が気になる方は、ナイアシン(ビタミンB3)不足になっているかもしれません。

そこで、ナイアシン不足による症状や不足原因と、その対策について解説します。

ナイアシンの働きとは

ナイアシンは水溶性ビタミンの一つで、ビタミンB群の一種。

ビタミンB3やニコチン酸とも呼ばれます。

ナイアシンは三大栄養素の代謝に必要で、循環器、消化系、神経系の働きを促進し、皮膚や粘膜、脳の健康維持などを助ける働きをしています。

また、お酒を飲んだ時の悪酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解し、二日酔いを防止してくれる働きもあります。

ナイアシン不足によって起こる症状

ナイアシンはエネルギー生産のためにも欠かせないことから、ナイアシン不足によってエネルギー不足になり疲れやすくなったり、元気が出なくなったりしてしまいます。

また、皮膚や粘膜の健康を保つためにも欠かせないため、不足すると皮膚炎や口の中の炎症、胃腸機能低下などが起こりやすくなります。

さらに、精神状態に与える影響も大きく、ナイアシン不足によってイライラやうつも起こりやすくなります。

18世紀のヨーロッパや20世紀初頭のアメリカ南部で大流行した「ペラグラ」という病気は、ナイアシン欠乏症の一つで、ペラグラは「荒れた皮膚」を意味するイタリア語です。

ペラグラになると、激しい皮膚炎や口舌炎、慢性の下痢、さらに欠乏が進むと中枢神経が障害され、認知症に至るという重大な病です。

ナイアシンの不足原因

ナイアシンは、魚や肉、豆類など、たんぱく質を多く含む食材に豊富に含まれるだけでなく、たんぱく質に含まれるトリプトファンから体内で合成されます。

ナイアシン欠乏症の「ペラグラ」は、古くからトウモロコシを多食する地域に多発していました。

農民たちは、トウモロコシを主食とし、他の食物を摂取できない偏った食事になってしまっていたのでした。

トウモロコシにもナイアシンは含まれているのですが、トリプトファンが少ないので、トウモロコシの主食だけでナイアシンを補うことができないためペラグラにかかってしまうのです。

現代の日本でこのような重大な欠乏症におちいることはあまりないと考えられますが、極端に偏った食生活によるナイアシン摂取不足であったり、過剰にアルコールを飲み続けることによってナイアシンを大量に消費して欠乏状態に陥ってしまうことはあります。

トリプトファンからナイアシンを合成するためにはビタミンB6が必要で、そのビタミンB6が体内で働くためにはビタミンB2が必要となりますので、ビタミンB群不足はナイアシン不足を招きます。

さらに、トリプトファン合成は身体の中だけでなく、腸内にある腸内細菌からも行われますので、腸内環境悪化によってナイアシン不足になることもあります。

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ちなみに、ナイアシンだけでなく、ビタミンB1以外のビタミンB群やビタミンKは腸内環境が合成してくれますので、お腹の調子が悪い人はビタミン不足になりがちです。

偏った食生活、アルコールをたくさん飲む、腸内環境が悪い、という方は、要注意ですね。

血液検査の「LDH」の値からもナイアシン不足を予測することもできますので、気になる方はチェックしてみてください。

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血液検査データの「LDH=乳酸脱水素酵素」について説明します。

ナイアシン療法について

ナイアシンは、大量投与によって「ナイアシンフラッシュ」という現象が起こることでも知られています。

これは、ナイアシンの作用によって皮膚の中の脂肪酸が「プロスタグランジン」に転換されて血管が拡張し、皮膚の紅潮(皮膚が赤くなる)やヒリヒリ感、かゆくなるなどの症状がおこります。

この作用を利用して、心臓病などにナイアシン療法が用いられることもあります。

これは、血管を拡張させることによって血液循環を良くして、心臓疾患を改善するということです。

また、大量投与によって脂質異常症や動脈硬化の改善にも効果があることがわかっており、治療薬としてビタミンEとナイアシンの合剤「ニコチン酸トコフェロール」がよく知られています。

最近では、ナイアシンフラッシュは細胞に蓄積されたヒスタミンを放出する効果があるということから、花粉症の改善が期待できるとして、ナイアシンフラッシュを試す人も増えているようです。

ナイアシンフラッシュが起こる量は人によって個人差があり、50mg程度で起こる人もいれば、500mg飲まないと起こらない人もいます。ナイアシンフラッシュを起こす目的で飲む場合は、100mgから始めるのがスタンダードなようです。

ただし、継続的に大量のナイアシンを服用し続けると、血液中のホモシステインレベルを上げ、心疾患や肝臓障害のリスクを増大するという意見もありますので、長期にわたって医療レベルでの使用をする際は医師に相談が必要です。

ナイアシンと統合失調症

ナイアシンは、統合失調症やチック症の治療にも使われます。

厚生労働省によると、成人の1日当たりのナイアシン許容上限摂取量は30mgとなっていますが、統合失調症への治療の場合は一日に3000mg(3g)を使用することがあります。通常の量の、実に100倍ですね。

ナイアシンは、神経のつなぎ目の「シナプス」において、ドーパミンを取り込むために必要なたんぱく質を多く作り、結果脳内のドーパミン量を減らし、統合失調症を改善するのに役立つと言われています。

しかしここで、3000mgものナイアシンを摂取してしまっては、ナイアシンフラッシュが起こりすぎてしまうのではないか?!という疑問が生まれませんか??

実は、統合失調症の人の場合、体質的に脂肪酸がプロスタグランジンに変換されにくい、つまり、炎症が起きにくいため、大量にナイアシンを摂ってもナイアシンフラッシュが起こらないのだそうです。

実際、統合失調症の人は炎症が起こりにくいことから、関節炎になりにくかったり、痛みをあまり感じない、といった特徴を持つ人が多いようです。ナイアシンへの反応が極端に少ない分、通常よりも多くのナイアシンを身体が必要としている、ともいえます。

栄養素の必要量は人によって大きく異なるというのは分子栄養学の常識ですが、まさにこの統合失調症とナイアシンの話は、そのことを良く表している一例ですね!

ナイアシンはペラグラや統合失調症などの他にも、たくさんの疾患の予防や治療に役立つことがわかっています。

例えば、関節炎の治療や脂質代謝異常、糖尿病などへの効果も報告されています。

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