「有機酸検査」って、項目がたくさんあって、聞きなれない言葉も多く、ちょっとわかりにくいですよね。
そもそも、「有機酸検査」って何???
という人も多いと思います。
そこで、有機酸検査についての説明と、結果の見方について簡単にまとめてみました。
有機酸検査は腸内環境やエネルギー代謝を予測するのに結構使える検査だと思うので、ぜひ参考にしてみてください。
有機酸検査とは?
有機酸検査は、体内の代謝産物を調べことによって腸内環境や身体の栄養状態を調べることができる尿検査です。
有機酸とは、体内の代謝過程で産生される化合物。
エネルギーの産生や、細胞の維持・修復などにも関わっています。
有機酸検査で調べられるのは、以下のようなことです。
・ビタミンやミネラルの欠乏
・エネルギー代謝の状態
・神経伝達物質
・腸壁の状態
なぜ尿検査をすることで腸内環境が分かるのか
腸内に棲む酵母菌の産生物である有機酸の一部は、消化管から吸収されて、肝臓から腎臓を経由して尿として排せつされます。
腸管から吸収され尿中に出てくる有機酸の量はごくわずかな量ですが、それをしらべることで間接的に消化管の状態を予測することができます。
有機酸検査が作られたきっかけ
有機酸検査は、もともと自閉症の研究からはじまりました。
アメリカの臨床化学学会認定博士のウィリアムショー氏は、自閉症の子どもの尿で上昇している微生物が増えていることに着目し、研究を続け多くの論文を発表し、その研究の集大成として「グレートプレインズ研究所」を設立しました。
ウィリアムショー博士によると、「自閉症の子供において、尿中で上昇しているもののほとんどは微生物に関連していることがわかった。多くの医師は自閉症は遺伝子由来だと主張するが、私は反対に、遺伝子に依存しない原因がここにあると確信し、この研究を続けた」としています。
(実際には、自閉症は遺伝的要素や脳の栄養状態、腸内環境、重金属などいろいろな要因が重なり合っているので、原因を一つに絞ることはできないのではないかと言われています)
自閉症の子どもでは、クエン酸回路の代謝産物(シトラマル酸・クエン酸・酒石酸・フェニル酢酸)とアラビノースが増加しているといいます。
これは、腸内環境の悪化とクエン酸回路の機能低下を意味しています。
腸内環境やクエン酸回路の機能を調べることは、自閉症に限らず、慢性不調を改善したい人や健康維持と増進目的の人にも役立つということで、有機酸検査は世界各国に広まりつつあります。
ただ、まだまだ一般への認知度は低く、価格も高額(4万円程度)であるということと、取り扱っているクリニックも少ないため、誰もが気軽に受けられる検査となるには時間がかかりそうではあります。
有機酸検査の結果の見方
それでは早速、有機酸検査の項目の中でも特に重要なものについて解説していきます。
イースト菌と真菌マーカー
最初に、腸内で微生物が異常に増殖していないかどうかを見る項目があります。
特に注目してほしいのが、「酒石酸」と「アラビノース」という項目です。
この2つは、カンジダ症のマーカー。
カンジダ菌は腸内のヒアルロン酸を食べて酒石酸とアラビノースを産生し、この2つが尿中に多く出るようになります。
つまり、アラビノースと酒石酸がHとなっている(高い)場合は、腸内でカンジダ菌が増えている可能性が高いということです。
ただし、酒石酸自体は無害なものです。
酒石酸はブドウなどの果物にも含まれていて、酒石酸を摂っているとそれが尿中にたくさん出てきてしまいますので、検査の24時間以内は食べないようにします。
アラビノースに関しては、体内で有害な終末糖化産物(AGEs)を作る作用もあるため、できるだけ増やしたくない物質です。
クロストリジア菌マーカー
「クロストリジウム属」という種類の腸内細菌は数百種類あり、破傷風菌・ボツリヌス菌・ウェルシュ菌といった悪玉菌の他、善玉菌の一種である酪酸菌もこの属に含まれます。
クロストリジウム属の悪玉菌は神経毒を持ち、脳機能に異常を起こすことがあるので注意が必要です。
HPHPA
「HPHPA」は腸内の悪玉菌から作られる毒物の一種。ドーパミンの代謝異常の有無を調べます。
これが過剰な場合、ドーパミンが過剰でノルアドレナリンが上手く作られていない可能性が高く、自閉症・重度のうつ・慢性疲労・チック症・統合失調症・大腸炎などが起こりやすくなると言われています。
DHPPA
「DHPPA」はクロストリジウム菌の中でも善玉菌によって産生されるので、腸内の良性バクテリアが多いと値が高くなります。
シュウ酸代謝物
「シュウ酸」とは、主に野菜に含まれる「アク」の成分。
ホウレンソウのあくや竹の子のえぐみに多く、その他トマト、ナス、サツマイモ、ピーナッツ、チョコレート、緑茶、サトイモ、山芋などさまざまな食品に含まれます。
腸内環境が悪いとシュウ酸が身体に溜まりやすく、シュウ酸濃度とアラビノースは相関関係があることがわかっています。
つまり、シュウ酸が高い場合は腸内環境のケアをした方が良いということです。
ただし、シュウ酸の多い食品を食べた場合やビタミンCを摂取したときも値が高くなるので、検査前は摂取を控えます。
解糖回路の代謝
乳酸とピルビン酸は、「解糖系」の終点となる物質です。
ピルビン酸がミトコンドリアの中に入ることができると、ATPを効率良くたくさんつくることができます。
酸素不足であったり、ピルビン酸デヒドロゲナーゼが不足している場合、ピルビン酸はミトコンドリアに入ることができないため、乳酸へと変換されます。
乳酸とピルビン酸が高い場合、ミトコンドリアでエネルギーを上手く作ることができていないということが予測されます。
原因として考えられるのは、
・ミトコンドリア機能低下
・急激な運動による酸素不足
・貧血(酸素不足)
・ピルビン酸脱水素酵素不足
・コエンザイムQ10不足
・αリポ酸不足
・ビタミンB群不足(特にビタミンB1)
・インスリン抵抗性
などが考えられます。
ミトコンドリアマーカー
コハク酸
コハク酸が高い場合、ビタミンB2不足またはコエンザイムQ10不足の可能性が高いです。
ただし、グルタミンサプリを摂っている場合もコハク酸が高くなるのでその場合は問題ありません。
逆に、コハク酸が低すぎる場合はBCAAサプリを摂ることがすすめられます。
フマル酸
フマル酸が高い場合も、ビタミンB群不足やコエンザイムQ10不足によるミトコンドリア機能低下が予測されます。
ミトコンドリア機能が落ちている場合、NADやビタミンEサプリなどもおすすめです。
リンゴ酸
リンゴ酸が高い場合、ナイアシンやコエンザイムQ10の補給が有効です。
クエン酸
腸内環境悪化や過敏性腸炎で上昇します。
ただし、柑橘類などクエン酸を含む食べ物をたくさん食べていて高くなっていることもあり、その場合は問題ありません。
アコニット酸
アコニット酸はクエン酸回路において、アコニターゼ(酵素)によって作られます。
アコニターゼは貧血やグルタチオン不足があるとうまく働かなくなります。
グルタチオン不足だと、体内の活性酸素が増えやすく、エネルギー不足にもなりやすいです。
つまり、アコニット酸が低すぎる場合、貧血やグルタチオン不足の可能性があり、エネルギー不足になりやすいということです。
神経伝達物質代謝物
5-HIAA
この項目は、セロトニン不足で低値になります。
キノリン酸・キヌレン酸
この2つは神経毒があり、交感神経を刺激します。
セロトニンとキノリン酸の材料は、どちらもトリプトファン。
体内に炎症がある時は、セロトニンが作られにくくなり、代わりにキノリン酸が増えるという性質があります。
セロトニン不足は、うつや不眠を引き起こしますし、キノリン酸の過剰はアルツハイマーや統合失調症、自閉症、心臓発作など、神経毒性に関わる疾患のリスクが上がります。
(セロトニンとキノリン酸のバランスは、後述する「キノリン酸/5-HIAA比率」で確認できます。)
HVA/VMA比率
HVAがVMAに対して多すぎる(つまりHVA/VMA比率が高い)場合、ドーパミンからノルアドレナリンへの経路が阻害されている=つまりドーパミンが過剰になっているということです。
原因としては、腸内環境が悪いか、ビタミン類の不足が考えられます。
逆に、銅が過剰な人はドーパミンからノルアドレナリンが変換されすぎて、ノルアドレナリンが過剰になります。
キノリン酸/5-HIAA比率
この値が高い場合、キノリン酸に対してセロトニンが少なくなっている状態です。
原因として考えられるのは、炎症・ビタミンB6不足、または、フタル酸(プラスチックに熱いお湯を入れると出てくる成分)の害がある場合もキノリン酸が多くなります。
ピリミジン代謝物ー葉酸代謝
ウラシルとチミンは、メチレーション状態を示します。
ウラシルにメチル基が付くとチミンになります。
例えば、ウラシルが高値でチミンが基準値といったパターンの場合、メチレーションがうまくいっていないということを示します。
メチレーションがうまくいかない原因は、遺伝子変異、カンジダ、重金属、葉酸やビタミンB12不足などが考えられます。
ケトン&脂肪酸酸化
3-ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸が上がっている場合、脂肪酸代謝が亢進してケトン体が増えているということです。
ケトン体が高くなる原因として考えられるのは、断食やケトンダイエット、熱性疾患、糖尿病などがあります。
栄養素マーカー
栄養素マーカー(ビタミン)の項目は、値が高いから足りていて、低いから不足というわけではなく、項目によっては高値=不足を示すものもあります。
(つまり、値がオーバーしているからといって必ずしも摂取量を減らせばよいというわけではありません)
ビタミンB12 メチルマロン酸
この項目は、ビタミンB12欠乏で高値になります。
ビタミンB2 グルタル酸
この項目は、ビタミンB2欠乏で高値になります
ビオチン メチルクエン酸
この項目は、ビオチン欠乏で高値になります
ビタミンC アスコルビン酸
ビタミンCに関しては、摂取量が多いと上昇するのですが、検査のために輸送中に代謝されてしまうため、だいたい結果はゼロとなる場合が多いようです。
コエンザイムQ10 3ヒドロキシ3メチルグルタル酸
この項目は、コエンザイムQ10不足で高値になります
解毒の指標物質
グルタチオン
「ピログルタル酸」という項目は、グルタチオン不足だと高値になります。
グルタチオン不足の原因は、炎症、ストレス、重金属、遺伝子異常など。
グルタチオン不足の場合は、グルタチオンサプリ、αリポ酸、ビタミンC、セレンなどを補充すると良いでしょう。
過剰アンモニア
オロチン酸が高い場合、体内でアンモニアが増えていることを示します。
原因は、便秘、肝不全、消化管出血、腎障害、最近感染、抗痙攣薬、先天性の病気、尿素回路がうまくまわっていないなどが考えられます。
ミネラル代謝物
「リン酸」が過剰な場合、骨の代謝異常の可能性があります。
リン酸は加工食品の中に多く含まれますので、リン酸が高い場合は食事の内容の見直しが必要です。
また、副甲状腺機能亢進、ビタミンD欠乏、骨の損傷(骨折など)、鉛濃度が高い時にも高値になります。