小腸の不調は万病の元!小腸内細菌増殖症「SIBO」について

「腸の健康」といえば大腸を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実はお腹の症状や体調不良の原因が小腸の不調にある場合も多くみられます。小腸内細菌増殖症(SIBO。シーボと読みます。)があると、お腹の症状→例えば、お腹にガスがたまりやすい、ポッコリお腹、便秘、下痢しやすい、腹痛、げっぷが頻繁に出る、お腹がゴロゴロ鳴る、胸やけ、逆流性食道炎、過敏性腸症候群、などの症状が出やすくなります。そこで、この気になる「SIBO」について解説します。

現代人の小腸は疲れている?!

「SIBO(シーボ)」とは、Small Intestinal Bacterial Overgrowthの略で、小腸の中で腸内細菌が爆発的に増えてしまった状態です。

「腸内環境を整える」といったとき、大腸も小腸も含めた腸全体の状態を考えることが大切です。最近では健康への意識が高い人も増え、「腸内細菌ブーム」ともいえるほど、腸内細菌の本はたくさん出版されていますが、「小腸の健康」に特化して書かれた本って、意外と少なかったりしますよね。

(SIBOについての本は、「小腸を強くすれば病気にならない」にとても詳しく書いてあっておすすめです。)

小腸の疾患である「SIBO」は、欧米では何年も前からかなり脚光を浴びているようなのですが、日本ではあまり知られていない言葉であったりもします。

胃で消化された食べ物は小腸に送られ、胆汁や膵液を加えて食物をさらに消化分解し、小腸で栄養分のほとんどが吸収されます。その先の大腸では、小腸で吸収しきれなかった食べ物の残りかすから、水分と少量の栄養素を吸収し、便を作って身体の外に排泄します。小腸の長さは、なんと本人の身長の3.5倍程度もあり、体内で最も細長い臓器です。小腸の粘膜には「絨毛」と呼ばれる絨毯の毛のようなものがたくさんあって、食べ物から栄養分を効率的に吸収できるよう、食べ物と接する表面積を広くしています。吸収された栄養分は血液中に吸収され、様々な過程を経てエネルギー源となるわけですが、小腸の働きが悪ければ、アミノ酸やたんぱく質の吸収が悪くなりますし、ビタミンやミネラルの吸収も悪くなります。特に、SIBOによって胆汁の働きも悪くなりますので、脂溶性ビタミン※(ビタミンE・A・D)の吸収も悪くなって欠乏を生じやすくなります。(※ビタミンKも脂溶性ビタミンですが細菌の発酵によって生成されるのでSIBOによって不足することはないと言われています)

さらに、ただでさえ栄養素を吸収しにくい状態になっているうえに、腸内細菌に栄養を横取りされて、ますます栄養不足になってしまいます。

すると、肥満やうつ、痩せすぎる、疲労感、不眠、肌荒れ、アトピー性皮膚炎、慢性的な鉄欠乏性貧血、ビタミンB12欠乏症、糖尿病、免疫力の低下、肝臓病、狭心症や心筋梗塞など、様々な病気の原因となるリスクが高まります。

食べたものがうまくエネルギーになってくれないということですので、当然ミトコンドリア機能も低下して、疲れやすいといった症状も出やすくなります。

意外なところでは、「むずむず足症候群」や「ロザケア」(しゅさという顔の赤み)がSIBOのせいで起こることもあったりします。

さらに、「腸脳相関」という言葉があるように、ダメージを負った腸は脳にも強いストレスを与え、メンタルバランスを崩してしまいます。腸と脳は相互に影響を及ぼしあっていますので、ストレスによって脳の状態が良くない場合も、腸に悪影響を与えることになります。

食生活の変化や、忙しくてストレスの多い生活を送っている現代人は、次に説明する「SIBO」になっているケースが多いと言われています。

小腸と大腸では、腸内細菌の量も種類も異なる

腸の中に生息する腸内細菌が私たちの健康や病気に関わっているということは皆さんもよく知っていると思います。腸内に棲む腸内細菌は数千種類に分かれ、約100兆個いると言われていて、その種類ごとに集団を形成しながら棲みついています。

腸内細菌は小腸から大腸まで自分の棲みやすい場所に分布していて、消化液が多い胃や十二指腸では菌が少なく、小腸は酸素が存在しやすく酸素の有無に関係なく生息できる乳酸菌などが多くなり、盲腸から大腸になると嫌気性のビフィズス菌などが多くなるという特徴があります。

もともと健康的な小腸は、大腸と比べて細菌の数は少ないのですが、小腸の細菌の数が本来の数の10倍といったように爆発的に増えてしまった状態がSIBOです。

SIBOになると、小腸で腸内細菌が異常に増殖していますので、本来大腸にあるべき菌が小腸の中に入り込んで停滞していたりもします。

さらに、腸内細菌の多様性が失われて、少ない種類の細菌が増えてしまうということも分かっています。

この場合、小腸内にある菌は悪玉のものとは限らず、「善玉菌」と言われる菌である場合もあります。身体にとって善玉の菌であっても、過剰になったり不適切な場所で増殖すれば、身体にとって好ましくない状態を引き起こすことになります。

SIBOによって起こる症状とは?症状がなくてもSIBOの場合もあるの?!

SIBOになると、大量のガスが小腸で発生します。例えば、ほんのちょっとしか食べていないのにすぐにお腹がパンパンに張って妊娠5か月みたいな感じなる、頑固な下痢や便秘、おならが出やすい、お腹がゴロゴロする、便秘や下痢に下剤や整腸剤を使っても効きづらい、などといった症状がある場合、SIBOの可能性が高いと言えます。(カンジダ菌の過剰増殖によってこのような症状が出ることもあります)

また、後述するように、SIBOが原因で逆流性食道炎や胸やけが起こる場合もあります。

最近の報告では、過敏性腸症候群と考えられていた人を良く調べてみると、85%がSIBOだった!という論文が出ています。SIBOの症状と過敏性腸症候群の症状はかなり似ておりオーバーラップしていて、過敏性腸症候群とSIBOを合併している人も多いといわれています。過敏性腸症候群がSIBOを引き起こす場合もあるし、逆にSIBOが過敏性腸症候群を引き起こすこともあって、片方が片方の先行疾患になっている可能性が高いのです。従って、過敏性腸症候群がなかなか治らないという人はぜひ、SIBOになっていないかどうかのチェックをするべきです。

また、一見健康そうな人でお腹の症状も訴えていない人でも、調べてみると5人に一人はSIBOであったという報告もあります。さらに、高齢になるほどSIBOになるリスクは高まり、健康の高齢者の35%はSIBOにかかっているというデータもあります。

SIBOが原因の逆流性食道炎や胸やけに、胃酸抑制剤はNG!

小腸で過剰に細菌が増えると、細菌の発酵により小腸で過剰なガスが発生し、そのガスが十二指腸を通って胃まで逆流してくることがあります。

すると、胃の中は過剰なガスで圧迫されて、ガスと一緒に胃酸が食道まで逆流してしまうことがあります。また、それが原因で胸やけを感じる人もいます。

こんな時に胃酸を抑える薬を飲むとどうなるでしょうか。以前に「胃の調子が悪い時に胃薬を飲んではいけない?!」でも書きましたが、胃酸には小腸内で細菌が増えすぎないように調節してくれる大事な役割があるのに、胃酸を減らしてしまうと小腸内の雑菌を殺すことができなくなり、小腸内で細菌が爆発的に増えることになります。増えすぎた菌は食物を分解して、さらに過剰なガスを小腸内で発生させます。つまり、胃酸を抑える薬でさらにSIBOが悪化して、ますます逆流性食道炎や胸やけが悪化する、とういう悪循環が起こることになります。

乳酸菌を摂ると体調が悪くなる?!

病院でお腹の調子が悪いというと、乳酸菌や宮入菌などといった腸の「善玉菌」の入った整腸剤が処方されることが多く、これによって多くの人は調子が良くなります。ですが、中には善玉菌の薬を多く飲むと、かえってお腹が張ってしまって調子が悪くなる人がいます。また、ヨーグルトや乳酸菌サプリを摂るとお腹が張る、という人もいます。

これは、小腸の中で細菌が増えすぎてしまっている、つまりSIBOであるという可能性が高いです。SIBOの人はただでさえ細菌が過剰になっていますので、さらに善玉菌を飲むと、もっとお腹の調子が悪くなってしまうことがあるです。

本来食物繊維や発酵食品は腸の健康に役立つものなのですが、もともと腸に不調がない人でも、身体に良いからといって上限なく食物繊維や発酵食品をたくさん摂りすぎると、健康を害することにもなりかねます。

一般的には健康に良いと言われていることでも、人によっては逆効果になること、そして、「過ぎたるは及ばざるがごとし」の典型的な例ですね。

SIBOが慢性炎症を引き起こす?!

私たちは腸内細菌とともに生きています。これを「共生」といいます。腸内細菌は身体にとって重要な働きをしてくれる一方、腸内細菌が過剰に増殖すると、炎症を引き起こします。

実際に、SIBOの患者さんにカプセル内視鏡で小腸の検査を行ってみると、小腸のびらんや潰瘍が多いことが報告されています。つまり、小腸の炎症です。このような状態になっていると、栄養の吸収不良なども引き起こします。SIBOの患者さんの腸内では、約50%の人に正常な状態では抑えられているカンジダやカビ、イーストの増加がみられるといわれています。

このような腸に環境の悪化が腸の炎症となり、リーキーガット症候群を引き起こします。本来通してはいけない未消化の栄養分や細菌の作った毒素を体内に吸収しってしまう状態になってしまうのです。

小腸で起きた炎症は、全身に飛び火して様々な悪影響を与えます。もちろん、小腸に限らず身体のどこかに慢性炎症があれば、体調不良の原因となったり、老化の原因となりますので、老化を遅くして病気にならないためには炎症対策をすることは非常に重要です。

SIBOが身体に悪いということはよくわかりましたが、具体的に何が原因でSIBOが起こるのか、気になりますよね。SIBOの原因については小腸内細菌増殖症「SIBO」の原因とは?!で詳しく解説しています。

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