「ストレスは役に立つ」と思うと、実際にそうなる?!ストレスを力に変える方法について。

★心理学

「スタンフォードのストレスをチカラに変える教科書」に学ぶ、
ストレスを味方につけ、「力に変える方法」について解説します。

ストレスは「敵」ではなく、「味方」になる?!

みなさんは、「ストレス」に対して、どのようなイメージを持っていますか?

ストレスは健康に害を与え、病気の元になるから、なるべく避けた方が良い、というのが一般的な考え方だと思います。

「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」の著者で健康心理学者であるケリー・マクゴニガルも、心理学や医学の様々な見地において、ストレスは身体にとって有害であることは明白で疑いようのない事実であると考えていました。

ケリーが主張してきたのは、ストレスによる悪影響です。

例えば、

・心臓病・うつ病・依存症など、様々な病気がリスクを高まる

・脳細胞を殺してしまう

・DNAにダメージを与える

・老化を促進する etc.

そこで、いかにストレスを緩和するか、といった内容の論文や本の執筆、メディアの取材に対してもアドバイスをしてきたのです。

ところがケリーは、ストレスについての考えを大きく改めるきっかけとなる驚くべき研究結果を偶然知ることになります。

その研究結果とは、

「ストレスが健康に悪い」

と考えていた人は、

「ストレスは健康に悪い」

と考えていなかった人よりも死亡リスクが高いというものでした。

強度のストレスを受けていた参加者の中でも、「ストレスは健康に悪い」と考えていなかった人たちは、死亡リスクの上昇がみられなかったばかりか、ストレスがほどんどない人たちよりも死亡リスクが低かったのだというのですから驚きです。

つまり、

人はストレスだけでは死なないが、ストレスが健康に悪いと考えているとその悪影響を受けるということです。

この研究結果を知った著者は動揺します。なぜなら、彼女はずっと人々のためになると信じて、「ストレスは健康に悪い」ということを力説してきたのです。

いっそのこと、こんな研究結果は見なかったことにしてしまおうかとも思ったとも述べています。

しかし彼女は、このことをこれまでの自分の考えを見直す良い機会と考え、過去30年間の化学的研究や調査の内容を詳しく調べ、先入観を持たずにデータを見ていくことにしました。

すると、ストレスは一般的に言われている通り有害であるという証拠も見つかったけれど、一般にはほとんど認識されていないような良い面もあるという証拠も見つかったのです。

ストレスに対する考え方を変えることで、私たちはもっと健康で幸せになれるのです。

これは、これまでの私たちの考えてきた常識を覆す大きなパラダイムシフトであると言えるのではないでしょうか。

「考え方」でストレスホルモンの分泌が変わる?!

ここで、この本に書かれていた実験を一つ紹介したいと思います。

実験では、まずは被検者を2グループに分け、ストレスに関する2種類のビデオをそれぞれに3分間程度見せます。

そのあと、被検者にわざと強いストレスを感じさせるような模擬面接を行い、その時の唾液中のストレスホルモン(コルチゾールとDHEA)の量を調べます。

ビデオの内容は、

①グループ・・研究によって、ストレスには実は良い効果があるということがわかってきた。ストレスがいかにパフォーマンの向上に役立ち、健康を増進し、成長を促すものであるかということを説明することで、ストレスをポジティブにとらえたくなるような内容。

②グループ・・研究によって、ストレスは私たちが思っている以上に心身を消耗させるということが明らかになってきた。ストレスがいかに健康に悪く、幸福感を失わせ、パフォーマンスを低下させるか、ということを説明し、ストレスに対するネガティブなイメージをさらに植え付けるような内容。

ちなみにどちらのビデオの内容も、実際の研究事例を引用していて、ある意味どちらも真実であると言えます。

しかし、どちらのビデオを見るかによって、被検者のストレスに対する認識が変わります。

その時、ストレス時の人の身体の反応に違いが現れるのかどうかを調べるのがこの実験の目的です。

コルチゾールとDHEAについて

ここで、ストレス時のホルモン分泌についておさらいしておきましょう。

人はストレスを感じると、副腎から分泌されるコルチゾールとDHEAと呼ばれるホルモンの量が増えます。

コルチゾールは、糖代謝や脂質代謝を助け、ストレス時に身体がエネルギーを使いやすい状態になるよう働きます。また、消化・生殖・成長など、ストレス時には重要ではない身体の機能を抑制するように働きます。

一方DHEAは、コルチゾールの作用を抑制したり、傷の治癒を早める、免疫機能を高めるなどの効果があります。また、ストレスの経験を通じて脳が成長するのを助けるという働きもあります。

この二つのホルモンは、どちらも身体にとって必要なホルモンですが、

慢性的なストレスがある場合、この二つのうちどちらのホルモンが多いかによって体への影響が大きく変わってきます。

コルチゾールが多すぎると、免疫機能の低下やうつ病などの症状が現れやすい一方、

DHEAが高いと、ストレスに関連する病気のリスクが低下する傾向がみられるのです。

また、コルチゾールに対してDHEAの割合が高い方が、集中力が高まり、問題解決能力に優れ、ストレスに負けずに頑張ることができるという傾向もみられると言われています。

考えが変わることで身体にどのような変化が見られたのか

さて、さきほどのストレスに関するビデオを見せた実験ではどのような結果が得られたのでしょうか。

結果から言うと、もう皆さんもお気づきの通り、①と②のグループではコルチゾールとDHEAの割合に違いが見られたのだそうです。

ビデオを観ただけではどちらのグループもコルチゾール値に変化はなかったのですが、意図的にストレスを与える模擬面接では、予想通り、被検者のコルチゾールの値が上昇します。

しかし、①のグループ(面接前に「ストレスには良い効果がある」というビデオを見せられた人たち)は、②のグループ(面接前に「ストレスは心身を消耗させる」)というビデオを見せられた人たち)に比べ、DHEAの分泌量が多くなったという結果になりました。

「ストレスには良い効果がある」と考えたことが、たんなる主観的な感じ方だけでなく、副腎から分泌されるストレスホルモンという生理的な部分にも影響を与えたという結果になったのです。

つまり、「ストレスは役に立つ」と思うと、実際にそうなるということです。

ストレスによって「オキシトシン」の分泌が増加する?!

本の中では、
ストレス反応の一つとして「オキシトシン」というホルモンの分泌が高まることも強調されています。

オキシトシンとは、人と触れ合ったり、赤ちゃんや可愛い動物を抱っこしたりするときに分泌されるホルモンで、「愛情ホルモン」や「抱擁ホルモン」としても知られています。

オキシトシンは
心身をリラックスさせたり、
心臓細胞の再生や修復にも役立つ
重要なホルモンです。

ちょっと意外に思う人もいるかもしれませんが、
オキシトシンはストレス反応として生じる脳内化学物質でもあります。

なぜストレス時にオキシトシンが必要になるのかというと、

人間がストレスを感じる時は、
自らの身を守るために他者とのつながりを強化して
協力し合ってストレスに対処していこうという本能が働くからです。

オキシトシンには社会的な絆を強化したり、
周りの人への思いやりや信頼の心を高める効果があるのです。

さらに、
オキシトシンは心に勇気をもたらしてくれる物質でもあることが知られています。

オキシトシンの働きによって脳の恐怖反応を鈍らせ、
緊張によって身体が動かなくなったり逃げ出そうとするのを防いでくれるのです。

ストレスとうまく向き合い、うまく利用しよう!

もちろん、
自分では処理しきれないほどのストレスが
体に害を与えてしまうことはあるかもしれません。

しかし、
人はストレスを「避けなければ」と思えば思うほど、
それが不可能であることによって余計に苦しくなり、
自己破壊的な行動を招きかねません。

それよりも、
ストレスの良い面をうまく利用して向き合っていこうとする方が、
無理してストレスを避けようとするよりもずっと賢明な方法である
と考えられます。

ストレスの良い面とは、ストレスの経験から人は人は学び、成長し、強くなることができるということです。

本の中では、ストレスが最も害になるのは、
自分はストレスに対して無力だと感じている場合や、
自分が直面している問題に対処できる自信がなく、
つらい思いをしてがんばることに意味を見出せずにいる状態にある時
であるとしています。

また、
自分にとって大事な価値観を忘れずに生きることや、
目的意識をもって生きることこそが何よりも大切である
ということも述べられています。

今日からぜひ、
従来のストレスへの捉え方をガラッと変えて、

「このストレスによって、私はどんな風に成長したいんだろう」

という意識を持って生活してみてください♪

 

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