甲状腺機能に関連する血液データ項目について解説します。
甲状腺機能の低下症状
甲状腺は、栄養素をエネルギーにする働きをする臓器です。
甲状腺機能は副腎機能に大きな影響を受けるため、副腎疲労の人は甲状腺機能の低下も起きている場合も多くみられます。
甲状腺機能低下の典型的な症状として、乾燥した髪、まばらな眉、眼のクマ、眼のむくみ、乾燥肌、冷え、低体温、疲労感などが挙げられます。ただし、これら全部の症状が出るわけでもなく、気が付かないうちに甲状腺機能が低下している場合もあります。
また、甲状腺機能はカルシウム代謝とも関りが深いため、機能低下、または亢進どちらがあってもカルシウム代謝異常が起こりやすくなります。特に、Ca×Pが30以上(詳しくはカルシウム代謝異常について)だったり、骨密度が低い場合は要注意です。
甲状腺と関係するホルモン
甲状腺に関係するホルモンには、次のものがあります。
甲状腺刺激ホルモン TSH
甲状腺ホルモン FT3(遊離トリヨードサイロキシン)←活性度が高い。
FT4(遊離サイロキシン)
FT4はFT3に変換され、活性度の高いホルモンとなります。コルチゾールが多すぎる場合(つまり副腎疲労の反応期)、T4からT3への変換が妨げられT3が少なくなり、甲状腺機能の低下が見られます。
さらに副腎疲労が進行しコルチゾールが低下すると(つまり副腎疲労の疲弊期)、T4は活性度の低いrT3(リバースT3)となってしまいます。
TSH値の目安としては、アメリカの基準では1ぐらいが理想的と言われるようです。ただし、これはかなり厳しめな基準なので、目安は2以下が〇と考えれば良いでしょう。
TSHが多すぎる場合は甲状腺機能の低下があるため血中のFT4が減ってしまっているので、TSHをたくさん出して頑張っている状態であると推測されます。特に、TSH2以上は甲状腺機能低下の可能性があると考えられます。(ただし副腎疲労が進行すると低下することもあります)
そして、FT3の値は3ぐらい(2.5以下なら明らかに低い)、FT4の値は1.5ぐらい(少なくとも1以上)が理想であると言われています。
ちなみに、甲状腺ホルモンと妊娠の関係は深く、TSHが2.5以上だと妊娠しにくかったり、流産のリスクも上がると言われています。尚、妊娠中は甲状腺機能が亢進するためTSHは低下します。
ヨウ素と甲状腺ホルモンについて
ヨウ素は甲状腺ホルモンの主原料となります。ヨウ素が不足すると甲状腺ホルモンの合成が損なわれ、 甲状腺機能低下症や、胎児においては死産や流産、先天性異常の原因となります。
しかし、ヨウ素を過剰に摂取しすぎると、今度は逆に過剰なヨードが甲状腺機能を弱める結果となります。特に日本は海に囲まれた国なので、海藻(特に昆布とヒジキに多い)や魚介類を通じてヨウ素を過剰に摂取する機会は多いのかもしれません。とはいえ、普通の人が極端に食べすぎたりしない限り問題はないと言えるでしょう。
ただし、甲状腺疾患を持つ人がヨードを過剰に摂取することで甲状腺機能低下症を発症する可能性があるので注意が必要であるといわれています。また、バセドウ病を発症し治療を行っている人がヨードを摂取しすぎると、内服薬の効き目が弱くなることがあるようです。甲状腺ホルモンの産生を抑制するためにヨードの摂取を制限することもあります。
甲状腺機能低下による血液データへの影響
甲状腺機能が低下すると、コレステロール値は上昇する傾向が見られます。だだし、もともと低コレステロールの人はデータがマスクされてしまってコレステロール値が丁度よい値になっているというケースもあります。
甲状腺機能低下によって、コレステロール値だけでなく、MCVも上昇する傾向が見られます。一方、ALPは低下します。
また、甲状腺機能低下によってミトコンドリア機能が低下→筋肉の異化作用して(筋肉が壊れることによって)CPKが上がる といったことも起こるようになります。
甲状腺機能低下による血液データへの影響をまとめると、次の通りです。
コレステロール↑(上昇)
MCV↑(上昇)
ALP↓(低下)
TSH↑(上昇。ただし副腎疲労が重症になってくると低くなる場合もあり)
FT3↓(低下)
CPK↑(上昇)
甲状腺機能が気になる方は、「甲状腺機能低下を改善するために自分でできること」も参考にしてみてください。